損得勘定と仕組みづくりで
ユーザーの倫理観を向上させる

 一方、こうしたサービスが街全体で一気に広がる理由に、スマホ決済の定着がある。

 スマホ決済がこれほど流行した理由の一つに、中国では偽札流通の多さが言われている。2015年にも偽札対策がされた新しい札がリリースされたし、いまだに最高額紙幣は100元(1600円)なので、コンピュータでも買おうものなら札束を持ち運ぶ必要がある。札を数えて真贋をチェックする自動機械が多くの店に置いてある。

 もっとも、深センの工場労働者数名に前出の高口氏がインタビューしたところ、「偽札など聞いたことない。単に周りが使っていて、自分も便利だから使っている」という回答だった。たしかに、現金が電子マネーより不便なのは違いない。

 スマホ決済は確かに便利だ。小銭や認識できない紙幣にイラつく必要はないし、AliPay、WeChat Payのどちらの電子マネーも、支払時に優待やキャッシュバックがつくことが多い。同じ金額なら現金より電子マネーで持っている方が安心で使いやすいこと、支払時にさまざまな割引が受けられることにより爆発的に広まった。

 安心してお金が使えることは社会全体の生産性を上げる。数億人規模のユーザーを抱えるアリババやテンセントのようなサイズになると、中国全体の価値観を変え、現代社会に適応させることがビジネスチャンスになる。

 自動販売機やカラオケのように、製品と対価がその場で交換されるような商売に加えて、バッテリーのレンタルや自転車のシェアリングになると、きちんと使って返す行為にインセンティブがあったほうがいい。今はデポジットで解決しているが、もともと素行のいい人だったらデポジットなしで使わせるようなことができるとビジネスチャンスが広がる。

 アリババグループのAntFinancial(螞蟻金服)は、ジーマ信用(Zhima Credit:芝麻信用)というサービスをリリースしている。ビッグデータを用いたFintechサービスの一つで、AliPayの支払いと連動し、レンタルサービスなどで借りたものをきちんと返す、代引き通販をきちんと払って受け取る(仕組み上、届いたらキャンセルが可能なので、たくさん注文して即返品する利用者が多い)、公共料金などをきちっと払うことなど、正直に商売し、お金の流れを止めないことにより信用ポイントが向上する。他にも自動車を持っていることや学歴が高いこと、投資をしていることなどもプラス評価になり、個別の要素が推測されないように月に一度だけ変動する。