中国社会は「スマホありき」が前提となり、大都市ではスマホによる決済が当たり前になっている。スマホがなければ、日常生活にも支障をきたすほどであり、買い物だけでなく、タクシーを捕まえることにも苦労を強いられるのが実情だ。スマホが使えない高齢者や出稼ぎ労働者との「スマホ格差」もますます広がりつつある。なぜ、中国で「スマホ依存」がここまで進んだのか、取材してみた。(ジャーナリスト 中島 恵)

中国の都市部は
スマホ決算が当たり前

中国の大都市では、スマホ決済が当たり前になっている Photo by Kei Nakajima

「現金?そういえば、もうすっかり持ち歩かなくなりましたね。確か、2月の春節のときに1000元(約1万6000円)下ろしたのですが、まだ財布に300元以上も残っていますよ(笑)。レストランでの食事代やコンビニでの買い物はスマホで決済していますので、もう現金は使わないんです。財布から小銭を出すのも面倒ですしね」

 4月下旬、久しぶりに上海を訪れたときのこと、友人の王さん(35歳)は涼しい顔でこう話してくれた。1年ほど前から中国の都市部では至るところで「スマホ決済」が当たり前になってきた。それは私も知っていたが、中国がここまで急速に発展し“脱・現金化社会”に突入するということは、日本人の日常生活からはとても想像できない。

 中国でスマホが爆発的に普及し始めたのは2013年末ごろからで、まだ3年ほどしか経っていない。1000元(約1万6000円)以下の低価格帯のスマホが出てきたことや、高速通信の4Gが使えるようになり、スマホ自体も大型化、魅力的なアプリも続々と出現した。日本のスマホにももちろんアプリはたくさんあるが、日本の場合「遊び」の部分が大きく、生活する上で必要不可欠、というほど重要なアプリは多くない。