さらに、セキュリティゲートでIDカードなどと連動させれば、行先階を押す行為自体が必要なくなり、セキュリティとスピードの向上が同時に実現される(カードの中に、勤務階を入力しておく必要があるが)。このシステムは、欧米のエレベーター会社が先行したが、国内への展開時にセキュリティシステムと連動させたのは三菱電機が初であった。
行先予報システムと群管理システム(エレベーターが団子運転にならないようにするシステム)によって、ビル管理会社にとっては省エネになる。行列が短くなることよりも、管理会社にとっては「コストが下がる」ことが導入の決め手となる。
三菱電機は、まず自社の本社ビルで本システムを導入した後、それを“モデルルーム”として、他社への導入を進めている。さらに、エレベーターのハードだけでなく、カゴの中のセキュリティや空調、照明などの管理も行っている。空調・照明などは、まさに三菱電機の総合力が発揮できる分野であるが、警備などは専門の会社と提携している。
あらゆるシナジーが求められる
エレベータービジネスの未来
これまでのエレベータービジネスは、バンドリング(バリューチェーンのすべてを同一企業(グループ)が行うこと)によって、グループ内に価値を留めたきた。しかし、IT産業や医薬品産業と同じように、今後はアンバンドリング(バリューチェーンが解体されること)が進むかもしれない。現に競合の日立は、それを見越して英国で全メーカーの保守を行なう会社を買収した。
海外では、大きなビルになると複数の会社のエレベーターが設置されており、誰かがまとめて元請けとして保守を行ない、安全性とコスト削減の両方を実現することを求める管理会社も出てきた。
GEが行っている、他社製航空機エンジンのメンテナンスを一括して受けるようなビジネスは、エレベーター業界では各社ごとの違いが大きく簡単ではないが、時代の流れとして、求められてくるであろう。
こうした時代には、単品としてフラグシップ商品を持つだけでなく、空調、照明、セキュリティなどのビルシステム、さらには動く歩道などの公共システムとのシナジーも期待されるようになるため、三菱電機はもう一段ギアを上げる必要があろう。
その際には、これまで自前主義でM&Aの経験が少なかった三菱電機にも、M&Aによる事業立ち上げのスピードアップが求められるかもしれない。
(早稲田大学ビジネススクール教授 山田英夫)
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見えにくいところに、ビジネスモデルのツボがある――新刊『成功企業に潜むビジネスモデルのルール』の冒頭に書かれたこの一文に重要なヒントがあります。新しいビジネスモデルの企業が一時注目を集めても、あっという間に廃れてしまうことも珍しくありません。なぜ、そうなってしまうのか? それはそのビジネスモデルに、持続的優位性がなくなるからです。新しいビジネスモデルが失速する最大の要因は、社内のコスト構造、レガシー企業の報復、同じビジネスモデルの乱立です。面白いビジネスモデルでも、なかなか利益が出ない理由は、ここにあります。では、本当に強いビジネスモデルにはどんなルールがあるのでしょうか?
◆競争優位の真の要因を、数多くの事例から説き明かす
○エプソンは、なぜ成功パターンを自ら否定したのか?
○セブン銀行ATMの紙幣の補充は、なぜ月1回ですむのか?
○ソニー損保、成田空港、三菱電機、リクルート、リバイバルドラッグ、ソラコム、ランドスケイプ、カーブス……
【著者紹介】山田英夫(やまだ・ひでお) 早稲田大学ビジネススクール教授。「ユニークなビジネスモデル」を見つけ出す目、その語り口に大変高い評価がある。1955年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了後、(株)三菱総合研究所入社。大企業のコンサルティングに従事。89年早大に移籍。専門は競争戦略、ビジネスモデル。学術博士(早大)。ふくおかフィナンシャルグループ、サントリーホールディングス社外監査役。著書に『デファクト・スタンダードの競争戦略:第2版』(白桃書房)、『逆転の競争戦略:第4版』(生産性出版)、『異業種に学ぶビジネスモデル』『競争しない競争戦略』『ビジネス版 悪魔の辞典』(日本経済新聞出版社)他、多数。
【目次】
はじめに 見えにくいところに、ビジネスモデルのツボがある
序章 利益が出ないなら、ビジネスモデル自体を変えよう
1 エプソンは、なぜジレットモデルを捨てたのか/2 創造的破壊への挑戦
第1章 なぜ見えないビジネスモデルか
1 エプソンのケースが教えてくれること/2 ビジネスモデル探究の系譜/3 見えるところはすぐに同質化される
第2章 見えないビジネスモデルを読み解く
1 大企業のビジネスモデル/2 セブン銀行/3 ソニー損害保険/4 成田空港/5 三菱電機/6 リクルート/7 ベンチャー・中堅企業のビジネスモデル/8 リバイバルドラッグ/9 ソラコム/10 ランドスケイプ/11 カーブス/12 業界構造への挑戦中のビジネスモデル/13 ソニー不動産/14 ライフネット生命
第3章 真実は見えないビジネスモデルにある
1 見えないビジネスモデルの優位性
2 持続的なコスト構造
3 低コスト構造構築への新しい視点
4 持続的な競争構造
第4章 ビジネスモデル構築と運用のポイント
1 ビジネスモデル作りはOS作りと似ている
2 改善型アプローチにはなじまない
3 社外資源の活用――新しい酒は新しい革袋に
4 カニバリゼーションを克服する
5 ビジネスモデルのオープンとクローズ
6 ビジネスモデルは静止画ではなく動画
7 大手の「虎の尾」を踏まない
8 やせ我慢と現実とのトレードオフ
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