
京都・梅小路エリアに9月20日、廃線となった鉄道高架上の実物車両を使った異色のレストラン「FUTURE TRAIN」が開業した。紅梅色に輝く特急型車両「683系」が夜の京都に浮かび上がる光景は、まるで未来への列車のようでもある。オーバーツーリズムが深刻化する中、観光客の分散を目指す京都市の新名所となるのか。実際に訪れ、体験してみた。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
廃線となった鉄道高架上に
開業した「FUTURE TRAIN」
前回記事で取り上げたように、筆者は10月5日に京都鉄道博物館で開催された「駅弁シンポジウム」に参加してきた。昼前に東海道新幹線京都駅に到着すると、ぱっと見で半分以上が外国人旅行者。今年8月の外国人旅行者は300万人を超え、累計で昨年より400万人以上多い2800万人に達していることを実感させる光景だった。
そんな京都は過度な旅行者の集中、いわゆるオーバーツーリズムに悩まされている。京都市は2023年9月、観光庁長官に対して「持続可能な観光の実現に向け、本市をはじめ地域の実情を踏まえた対策」として、「観光課題対策への強化支援」、「公共交通等における観光課題対策への強化支援」を取りまとめるよう緊急要望を行った。
具体的には(1)京都駅一極集中の緩和、(2)市バスの混雑対策、(3)タクシー乗り場の滞留対策、(4)観光地の混雑対策、(5)道路の混雑対策、(6)嵐山・東山における混雑対策を挙げているが、全ての根本にあるのは旅行者分散の必要性だ。
その中で注目されているのが、京都駅から西に1.5kmほど離れた梅小路エリアだ。京都市が2021年に策定した「京都観光振興計画2025」では、「新しいエリアのにぎわいの創出」として、梅小路公園をはじめとする京都駅西部エリアの活性化などを進め、観光客の分散化を図るとしている。
東海道本線と山陰本線が分岐する梅小路はかつて、貨物駅や機関庫が立ち並ぶ輸送拠点だった。転機となったのは1972年、蒸気機関車の基地だった梅小路機関区の扇形車庫が、鉄道開業100周年記念事業として「梅小路蒸気機関車館」として生まれ変わった。