今や全国のセブン-イレブンとイトーヨーカ堂に設置されている、セブン銀行のATM。その「見えないビジネスモデル」の強みとは何か(写真は本文とは関係ありません) Photo:DOL

「コンビニでお金を引き出せたら便利」

 セブン-イレブンには、かなり前からこうした声が寄せられていた。同社は以前から公共料金などの収納代行を行っており、転居の多い若者などにとっては、引き落としの際の登録手続きの手間を省くことができ、夜間や土日でも気軽に支払えるコンビニの方が、銀行よりも便利であった。

 公共料金の支払いだけでなく、現金を引き出せたらもっと便利になるため、セブン-イレブンはまず銀行との提携でこの事業に参入しようと考えた。しかし提携だと、ATMが設置銀行の出張所扱いになり、サービス内容を自分たちで決められないなど自由にならないことが多く、同社は自ら銀行業の免許を採る方針に転換した。

 2000年頃は、金融機関の破綻が続き、当時の大蔵省も新しい銀行の認可に前向きで、ソニー銀行、ジャパンネット銀行などが認可されてきた。また既存の銀行は、バブル期に増やしてきたATM店舗を維持することが難しい時期に入っていた。

既存のネットワークに加盟できず
自分で銀行をつくるしかない!

 セブン&アイ・ホールディングスの前身であるIY(アイワイ)グループは、2001年にアイワイ・バンク銀行を設立した。銀行業の免許を取れば、金融機関各社が加盟している「統合ATMネットワーク」に加盟できると考えていた。しかし、他行客がIY銀行のATMを使うだけで、その逆は少なく、手数料が一方的に流れると考えられ、ネットワークへの加盟は認められなかった。そこでやむを得ず自力でネットワークをつくり、それを直接金融機関に繋げざるを得なかった。

 アイワイ・バンク銀行は、他行のように預金獲得や住宅ローンで競争するのではなく、他行と共存共栄できる「共通インフラ」のATMを提供するビジネスモデルとした。そのためにはパートナーが必須であり、まずは都市銀行や各県の第一地銀と提携を進めた。2001年度には9社、2002年度には48社と、立ち上がりこそ苦戦したが、2003年度には信用金庫やゆうちょ銀行が加わり、提携金融機関は一気に309社へと増えた。

 そして、2003年度には単年度黒字を達成、2005年には累積損失を一掃し、セブン銀行に改称した。

 2007年度には、全国すべてのセブン-イレブン、イトーヨーカ堂にセブン銀行のATMが設置された。すべての店にあることが、消費者の安心感、利便性につながった。