また、「生活保護の人々に就労させるべき」という内容の記述の直後に、「生活保護の人々はもともと問題が多いので、就労支援は無駄」という内容が述べられているなどの矛盾がある。生活保護費に関する計算をはじめ、基本的な誤りも多い。

 このチラシには、署名に使用するための署名欄もある。選挙区の国会議員に署名を郵送、ファクス、持参などで届けるように勧める記述もあるが、実際に署名の送付が行われたかどうかは定かではない。

 私自身は、第一印象として「ネタ臭」を感じた。生活保護への悪意も痛いほど伝わってくるのだが、チラシに登場する生活保護制度と生活保護の人々は、現実離れした想像上、あるいは観念上の制度や人物にしか見えない。さらに、なぜか「ネットのどこかで見た」以上の既視感を覚える。

「税金は働かないヤツらに回すな」
低所得者の不満を爆発させる目的か

 ともあれ、チラシが配布された場所は、生活保護の人々を含む低所得層の人々が数多く居住している公営住宅である。まさに「わがこと」や自分の生活基盤に対する中傷をぶつけられて、平静でいられるわけはないだろう。内容が無知と偏見に基づいていればいるほど、その内容をチラシの形にして表明し、間違いなく当事者の目に触れるように公営住宅の郵便受けに投函するという行為にも、恐怖を感じずにいられないだろう。

 チラシを見せてくれたミサトさんは、「低所得者の不満を爆発させて『税金は働かないヤツらに回すな』と生活保護バッシングをさせたい……ということなのでしょう。でも、それで本人がどういう得をするのか、私もわかりませんが」と語り、「相模原の事件を思い出してしまいました」と付け足した。

 そこで私は、自分が覚えていた既視感の正体に思い当たった。2016年7月、神奈川県相模原市の障害者施設に侵入して、入所者である障害者19名を殺害したU容疑者の犯行予告文だ。U容疑者の「障害者は社会的コストだから殺したほうがいい」という考え方に、福島市のチラシの「働かない人間は社会的コストだから生かさず殺さずで十分」という内容が、そっくり重なっているではないか。