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日本が降伏して太平洋戦争が終わったのが、1945年の夏。今年は戦後80年の節目の年に当たり、太平洋戦争を振り返るテレビ番組が多数制作された。そして今年の夏、もう一つ大きな話題となったのが、夏の甲子園に出場した強豪校、広島・広陵高校の暴力問題である。80年前の太平洋戦争と広陵高校の事件に共通する、日本人の弱点とは?(ライター、編集者 稲田豊史)

「空気」の支配

 NHKで8月16日、17日に前後編で放送されたドラマ『シミュレーション 昭和16年夏の敗戦』が話題になった。舞台は昭和16(1941)年。当時の官民若手エリートで組織された総力戦研究所が、あらゆるデータを分析して「アメリカと戦争をすれば確実に負ける」と結論付ける。

「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」NHKで8月16~17日に放送された戦後80年番組「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」メインビジュアル Photo:NHK 拡大画像表示

 総力戦研究所の報告は政府首脳の全員が聞いていた。軍の内部にすらアメリカに勝つのは無理だと考える者がいた。しかし真珠湾攻撃は決行され、太平洋戦争が始まってしまう。その理由として劇中で描かれていたのが、当時の「空気」だ。

 1941年と言えば、1937年から続いていた日中戦争の真っただ中。中国を後方で支えるアメリカを快く思っていない日本国民が多数を占めていた。その後、日本が仏印(フランス領インドシナ)に進軍すると、アメリカは日本への石油輸出を禁じる。こうして軍部や世論の間でアメリカ許すまじという「空気」が優勢になっていく。

「空気」はさまざまな人のセリフに登場する。「空気に逆らってもいいことはない」「アメリカと戦争しないほうがいいとは言いにくい空気」「一度動き出した空気に抗うのは至難の業」など。