週刊ダイヤモンド7月15日号の第2特集は「岐路に立つネット証券 トップ6人が語る未来像」。昨今ブームの「フィンテック」の元祖といえる「ネット証券」大手6社トップが、金融投資の将来を予見した。ここでは、本誌に収まりきらなかったインタビューの「拡大版」をお届けする。第4回は、老舗の松井証券の第4代社長に就任後、外交営業の廃止など業界の常識を覆す改革を次々に断行し、1998年には国内初の本格的なインターネット株取引を始めた松井道夫社長だ。(週刊ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

松井道夫・松井証券社長 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 フィンテック「1.0」でも「2.0」でもいいのですが、一番の根源は何でしょうか。物事には根源があり、単なる現象だけではないのです。インターネットを使う、使わないとか、表層的な面で物事を判断しがちですが、ネットの本質とは何か、なぜ競争に勝ち負けが生じたのか、といった形で突き詰めるのが商売では大事だと思います。

 そうした見地から言えば、ネットの本質は“営業マンの否定”です。もっと言ってしまえば“人間というコスト”の否定なのです。

 僕は(松井証券に入社前に働いていた)日本郵船という異業種から来ましたが、そこではまともな競争が行われていました。競争というのが実はどういうことなのか、郵船で学びました。その意味するところは、虚業と実業の線引きです。

 よく虚業、実業というと、世の中のためになるものを実業、ためにならないものを虚業という人がいますが、僕は全然違うと思います。おカネに色はありません。僕にとって両者の線引きとは「お客さまが認めるコストで成り立っているか、成り立っていないか」です。お客さまが認めない虚業は、時間がたつと実業に淘汰され、駆逐されます。これは世の摂理です。ですが、金融業界は銀行でも保険でも、この虚業と実業の線引きをするなと言っていた業界です。コストはすべてお上が決める。当然、価格もお上が決める。要するに、公的なカルテルです。