5月以降、神戸、名古屋、大阪、そして東京の港湾で相次いで確認された南米産の「ヒアリ」。7月4日には国内初の女王アリとみられる個体が見つかり、7月10日には港以外の内陸部でも初めて確認されている。いたずらに恐れる必要はないが、夏休み前に適正な情報を知っておいて損はない。1990年代にヒアリが侵入、定着した後、毎年死亡例も出ている米国ではどういう対処法がとられているのだろう。米国版“家庭の医学”ともいえるMSDマニュアル(旧・メルクマニュアル)などから、対処法を調べてみた。(医学ライター 井手ゆきえ)
米国南部の湾岸地域では
年間、人口の40%が被害に
ヒアリ(Fire ants、火蟻)は1990年代、もともとの生息地である南米から米国に侵入。そのまま米国に定着し、米国南部、特にメキシコ湾岸地域を中心に毎年被害が報告されている。ヒアリは開けた草地や公園などに生息するため、該当地域の市街地では毎年、人口の40%が刺され、少なくとも1年あたり30人が死亡しているという。2000年以降は貨物に紛れて中国、台湾、オーストラリアなど環太平洋地域にも広がり、今回、日本でも侵入が確認された。
瞬間的な痛みとやけどのような灼熱感
患部をすぐ冷やし、抗ヒスタミン薬を塗る
ヒアリに刺されると瞬時の痛みと赤い腫れ、そして灼熱感が生じるが、多くは1時間以内に消失する。その後、水ぶくれ(水疱)ができ、膿がたまると2~3日のうちに破れて治癒に向かう。
この時に二次感染を起こすことがあるので、患部を清潔に保つなどの注意が必要だ。ケースによっては、赤いポツポツやかゆみを伴うこともある。