女性にとって美容室は、美しくなるための場所であると同時に、家族や友人には言えない秘密もつい打ち明けてしまうところ。そこには人生のドラマが凝縮されている。女性向け健康・ライフスタイル誌『ゆとりら 夏号』の特集「女の人生は美容室が知っている」で、女性たちの「悩みの駆け込み寺」となっている美容室を密着ルポ。
私鉄沿線の閑静な街。レトロモダンな商店街に、8坪の小さな美容室がある。経営者は71歳の高橋ヒロコさん(仮名)。華やかな雰囲気の美容師だ。ヒロコさんは赤坂や麻布の美容室勤務を経て、24年前にこの街で店を持った。「以前は海外大使のヘアも担当した」というヒロコさんの元には、20代から80代まで大勢の女性客が訪れる。“気さくなベテラン先生”は、最高の話し相手でもあるようだ。そんなヒロコさんは最近「お客様の話の内容が変化した」と感じている。例えば嫁と姑の関係だ。
「昔から嫁との確執を話す方は多いですが、以前は『嫁をとっちめた』と、強気の発言ばかりでした。それが近年は『嫁にいびられる』と泣きごとが多い」
2駅先から電車で通う80代の女性は、10年前に夫を亡くして一人暮らし。都内に40代の長男家族(孫2人)が住むが、嫁との折り合いが年々悪化しているという。
「年末やお盆には泊まりで孫に会いにいくそうですが、数年前に、自分用の布団がなくなったと。それで腰が曲がっているのに、重たい布団一組をわざわざタクシーに積んでいくそうです」