“超高級老人ホーム”と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、豪華な設備や手厚いサービスだろう。しかし、その内側にはどんな人間が集い、どんな力関係が生まれているのか。ノンフィクションライターの甚野博則氏は『ルポ 超高級老人ホーム』にて各地の超高級老人ホームの内側に入り込んできた。本稿では、『潜入取材、全手法』を刊行したジャーナリスト・横田増生氏と、カタログを読んだだけでは決して分からない“内部”について二人が語り合う。(企画・構成:ダイヤモンド社書籍編集局 工藤佳子)

【入居金1億超も】超高級老人ホームに“入居できた人”と“お断りされた人”の職業とはPhoto: Adobe Stock

“普通の会社員”では
ほぼ入居できない現実

――横田さんはこれまで数々の企業などに潜入してきました。『ルポ 超高級老人ホーム』(甚野博則・著)を読んでどう思いましたか?

横田増生(以下、横田):介護業界内の人や経験者が書くっていうのは多々ありますが、業界について批判的な切り口でルポルタージュしている記事や書籍は甚野さんがほとんど初めてちゃうのかな。

 改めて『ルポ 超高級老人ホーム』を読むと、一体どんな人が入居しているんだという点に興味が湧きました。メーカーの元社長や取締役、大学の名誉教授、日本歌人クラブ元会長、地方の施設では投資で儲けた寿司職人などが出てきます。

 いわゆる超富裕層ですよね。一人でのんびり過ごしてますという女性の話もあるんだけれども、その人の夫や実家はどれぐらい儲かっているんだろうと思いました。

甚野博則(以下、甚野):どんな人なんだろう、と。

お金持ちでも
“クラブのママ”はNG

横田:もし自分が20歳でもう1回人生をやり直すとして、どの道を選んだら超高級老人ホームに入れたんだろうということを思うわけ。ジャーナリストとかはあまりいないですよね(笑)。

甚野:取材で話を聞く限りでは、資産の桁が違う人たちが入っていましたね。

横田:でも、お金はあってもクラブのママをやっていた女性は口うるさそうだから拒否されていたり、色んなすったもんだがあったりして面白い。やっぱりどういう人生を歩んだ人がここに行きつけるのかというところに僕は釘付けになるんですね。

甚野:取材のきっかけとして、超高級老人ホームの設備の豪華さっていうのはもちろんあるけど、入ってる人はどんな人なんだろうっていう疑問はありました。

 ある施設では入居者の方を集めてもらって、これまでどういう人生を過ごしてきて、高級老人ホームでの生活はどうなんですか、みたいな話を聞いたりもしましたね。