要約者レビュー
2015年のラグビーW杯にて、日本代表が南アフリカ代表相手に歴史的勝利をおさめたことは記憶に新しい。それまでラグビーの試合を観ることはおろか、ラグビーにW杯があることさえ知らなかった人でも、この勝利に沸き立ち、心をつかまれたはずだ。
エディー・ジョーンズ
210ページ
講談社
1400円(税別)
ラグビー日本代表の何がそこまで私たちを熱狂させたのか。もちろん、歴史的勝利という「結果」も大きいだろう。しかし何よりも私たちを熱くさせたのは、その試合のプロセスではないだろうか。対南アフリカ戦の終盤、残り時間2分を切ってスコアは29対32だった。劣勢ではあったが、ここで安全にキックを決めれば日本に3点が入り、引き分けにできる場面である。
しかし選手たちはそれで満足しなかった。成功確率がより低いトライを狙い、当時の監督である著者の制止も聞かずスクラムを組んだ。そして見事トライが決まり、それが決勝点となった。著者はそのときのことを振り返りながら、本当の成功は部下がリーダーを超えたときに起こるのだと語っている。
とはいえ、そこに辿りつくまでには長い道のりを経なければならなかった。本書の著者エディー・ジョーンズが日本代表のヘッドコーチに就任した当時、選手たちは自分で物事を考えることをせず、練習にも本気で取り組んでいなかったという。そんな選手たちを、著者は3年間でどのように変えていったのか。
本書『ハードワーク――勝つためのマインド・セッティング』は日本代表を高みへと引き上げた著者のマインドセットが、惜しみなく紹介されている珠玉の一冊である。「がんばる」こととハードワークの違いを知りたければ、本書を手にとるべきだ。 (和田 有紀子)
本書の要点
(1) 「自分はどうせダメだ」という考えを捨て去れば、誰でも成功できるようになる。
(2) 成功する秘訣は、自分の長所を認識しそれを最大限に活かすことである。そのためにはまず、長所も短所も含め、自分の現状をきちんと認識する必要がある。
(3) 練習は本番以上に苦しいものにするべきだ。そうすれば、本番になっても心に余裕が生まれる。
(4) 自分の力で変えることができるものと、できないものがある。自分でコントロールできるものにだけ目を向けるべきである。