日本でも進む治験薬の開発

 新薬開発のための治験には、第一ステージである「フェーズ1(第1相試験)」から最終ステージの「フェーズ3(第3相試験)」まで3段階あり、これらを全てクリアして初めて国への承認申請が可能になります。

 現在、Aβと結合し、脳内で異物を排除する役割を担うグリア細胞「ミクログリア」に除去させる「抗Aβ抗体」や、APPを切断するβセクレターゼに作用してAβの産生を抑える「BACE(βサイト切断酵素)阻害剤」などAβの異常蓄積を防ぐことを目的とした薬剤、また神経炎症の抑制やタウの凝集を防ぐことを目的とした薬剤が開発されています。

 日本の製薬会社においては、フェーズ3に進んでいるエーザイとバイオジェンによるBACE阻害剤「エレンベセスタット」「アデュカヌマブ」、中外製薬が親会社のスイス・ロシュと進める抗Aβ抗体「ガンテネルマブ」「クレネズマブ」、他にも、武田薬品工業、協和発酵キリン、富山化学工業、大塚製薬などが新薬開発に取り組んでいます。

治験をスムーズに進めるためのレジストリー研究

 治験に不可欠なのが、協力してくれるボランティアです。特にアルツハイマー病の場合、未発症の人を対象とする治験が主流となりつつあるので、ボランティアを募るのはたやすいことではありません。

 そこで欧米を中心に、国、医師、製薬会社が協力し、効果的に治験協力者を集めて臨床研究を促進する「レジストリー(登録)研究」が広まってきました。事前にアルツハイマー病を発症していない人に登録してもらい、認知機能検査などを定期的に実施。そのデータを蓄積します。治験がスタートする際には、ターゲットとなる人に協力のお願いをします。その中で、世界最先端のレジストリー研究の一つとも言えるのが、「DIAN研究」(日本国内では「DIAN-J研究」と呼称)です。

 2008年にスタートしたDIANは、NIHの一部門であるアメリカ国立老化研究所によりワシントン大学に設立されました。家族性アルツハイマー病のメカニズムを解明すると同時に、その家族の子どもの発症を阻止するための国際的な臨床研究です。これまで世界のアルツハイマー病研究に大きく貢献してきました。アジアやヨーロッパなどの参加国は、国際標準版の認知機能検査を用いるなど、手順を含むすべてアメリカの基準を厳密に遵守し、研究成果を共有しています。日本では14年4月に「DIAN-J」として参加しました。