キレる母親は
ハラッサーとしては二流

 ただし、叱りつけるのは、二流。一流の毒親は、0歳児の頃から徹底して子どもを調教しますから、わざわざ言葉に出して叱りつけずとも、一瞥するだけで子どもに言うことを聞かせることができます。

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 つまり、「勉強しろ」とガミガミ言う母親は二流の教育ママで、チラッと凍り付くような視線を投げかけるだけで、子どもに勉強させる力を持つ母親が一流だということです。二流の教育ママが子どもを東大に入れるのは、難しいのではないか、と思います。

 受験勉強のような知識の断片の理不尽な集積を、好んで勉強する人がいるとしたら、それは頭がどうかしています。受験勉強に励むことのできる人は、勉強そのものではなく、合格を目標にしているに過ぎず、それは母親(もしくは父親)に仕込まれ、自らの意思ではないものを、自らの意思と思い込んでいるからやっているに過ぎません。

 こうした親たちは、子どもを東大に入学させれば将来は安泰だと考えているのでしょう。しかし、この暴力の代償は高くつきます。

 人格形成が未熟な子どもの場合、母親からハラスメントを受ける日々を送ることで人格が崩れていき、健全に育つことができません。一流のハラッサーの元で育った子どもともなれば、0歳児の頃から徹底して虐待され続けるわけですから、受けるダメージは深刻です。

 かくして、大人になってからうつ病や統合失調症などの精神病を発症したり、自殺してしまうというような問題が起きます。自らが病まなければ、親ゆずりのハラッサーとして、家庭や職場で周囲の人たちを追いつめていく人物になることでしょう。

 親から暴力を受けて子どもが死亡した、というようなニュースを目にしない日の方が少ないくらいですが、子どもがエリートに育ち、外からは「子育てに大成功した」と見えるケースでも、深刻なハラスメントが隠れていることは少なくありません。

 ハラスメントを個人の問題として考えてしまうと、問題の真相は見えてきません。家庭こそが、親から子へと暴力を受け継ぐ装置であり、家族の非暴力化を実現しない限り、日本社会からハラスメントがなくなることはないのです。