La Fonera+(ラ・フォネラ・プラス)
「FON」専用ルータ「La Fonera+(ラ・フォネラ・プラス)」(3800円)。より安価な1980円のタイプもある。

 ユーザー同士の無線LAN回線を共有することで、無料のWiFiネットワークを提供する「FON」。

 2005年にスペインで始まった同サービスは、08年8月現在、すでに150ヵ国以上で展開、100万ユーザーを獲得している。翌06年には日本にも進出。現在のユーザー数は86000人余り、アクセスポイント(AP)数は約45000ヵ所で、これは世界で4番めに多い会員数となっている。

 自宅にネット環境が整っていれば、「FON」を利用するのは簡単。まず、公式サイトで登録して「Fonero(フォネロ)」と呼ばれるメンバーになる。その上で専用ルータを購入し、設置すればOK。これで、自身の回線帯域をAPとして一部開放する代わりに、外出先などで他ユーザーのAPに無料でアクセスできることになる。今年2月からはライブドアとも提携しており、JR山手線圏内の約80%を網羅するという「フォン・ライブドア」スポット約2200ヵ所のAPも利用可能となった。

 その「FON」が先頃、PSPとの提携を発表した。これによりPSPユーザーであれば、誰でも「FON」のAPを利用してPSPの公式サイトに接続できる。この場合、「フォネロ」となる必要はなく、PSP側で「FON」のAPを登録すれば、ソフトウェアの体験版や動画、壁紙などをダウンロードして愉しめる。「フォネロ」になれば、公式サイト以外へのアクセスも可能だ。

 「以前に、ソニーの携帯型ネット端末『mylo』のプロモーションなどを展開したことがあり、今回の提携は、そうした経緯を踏まえて生まれたもの。ゲームユーザーへのFONの認知度アップと同時に、PSPのオンラインサービスを強化できるという意味では、“Win-Winの関係”といえます」(フォン・ジャパン COO ニナ・ニックー氏)

 専用ルータの販売台数も伸びており、「提携の効果は徐々に現れている」(同氏)ということだが、その先には同社の新たな戦略も見え隠れする。「Alien(エイリアン)」と呼ばれるサービスの立ち上げである。これは、自身ではAPを開設せずに、使用料を払って「FON」のAPを利用するというプラン。今回のPSPとの提携は、そのための布石ともいえる。

「日本でエイリアンサービスを開始する計画は、もちろんあります。ただし、スタートさせるにあたって、十分なAPの拡充は必須。その意味でも、PSPとの提携は貴重な足掛かりといえます」(同氏)

 ISPによっては、接続アカウントの他者への提供を禁じているところもあるので注意が必要だが、「ライブドア」や「BB.excite」などのようにパートナーシッププロバイダとして名乗りを上げているISPもある。また福岡市の「天神・大名WiFi化協議会」のように、地域活性化に「FON」を役立てているケースも見られる。PSPとのコラボを機に、今後どのように展開していくのか注目したいところだ。

(中島 駆)