農機大手のクボタの業績が、回復している。リーマンショック後の減収減益から一転、今期は売上高1兆円を見込む。さらに大型買収をテコに、新たな市場への参入を目論んでいる。 

 業績は回復基調だ。2008年3月期には売上高、営業利益共に過去最高を更新したものの、その後、リーマンショックの影響で業績は低迷していた(図①)。しかし前期は3期ぶりの増収増益に転じ、今期の売上高は再び1兆円の大台に乗る見込みだ。

 クボタの中核事業は二つである。一つが農機、建機、エンジンなどの機械事業であり、もう一つが上下水道などの鉄管や環境プラントなどの水・環境システム事業だ。これら二つの事業で売上高の約9割を占めている。

 業績回復の理由は、海外における機械事業の好調さにある。

 前期はアジア、北米、欧州のいずれの地域も伸長したことで、売上高は前年比で約1割増の4251億円となった。クボタの機械事業の売上高は6515億円だから、すでに約7割を海外事業が占めることになる。

 特に成長著しいのはタイと中国を中心とするアジア市場だ。前期こそ天候不順などで低成長にとどまったものの、売上高は3年で倍増している(図②)。

 ほんの数年前までは、売上高の約3割を米国が占めていたことから、「米国銘柄」ともいわれていた。だが、今では米国とアジアの売上高は拮抗している。さらに14年3月期にはアジアの売上高は3000億円に達する見込みである。

 アジアシフトはさらに加速しそうだ。

 農業の機械化が遅れているアジアは未開拓の巨大市場だ。世界におけるコメの生産量を見ると、アジアが約9割を占めている。その量は年間6億1200万トン。日本は1060万トンだから、じつに60倍である(数値は09年)。

 しかし、機械事業の約7割を海外で稼ぎ出しているにもかかわらず、海外生産比率は約2割と低く、研究開発もほとんど国内で行っている。

 こうしたなか、クボタは急ピッチで生産のグローバル化に乗り出している。

 その一つがタイにおける生産拠点の構築だ。

 09年3月にトラクターの生産を開始し、昨年12月にはエンジンなどの鋳物、今年7月にはトラクター用油圧機器も生産し始めた。さらに今年12月にはコンバイン(収穫機)、来年10月にはエンジンの生産に乗り出す。基幹部品の現地生産を進めることで、部品製造から組み立てまでの一貫生産を行う計画だ。