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PC・スマホ・タブレットと決別?
シリコンバレーの老舗企業
HPにいったい何が起きているのか

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第159回】 2011年8月26日
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 実はタブレットやスマートフォンの世界では、機器の機能性、つまりデバイス面で追いつくのはそれほど難しくないと言われる。真の難問は、モバイル機器向けにアプリを開発するデベロッパーたちを囲い込めるかどうかだ。つまり新しいデバイスの周りに賑わいを作り出せなかったことがHPの敗因だろう。

 ちなみに、PC事業はスピンオフ後、かつてIBMがそうしたように他社に売却される可能性もあるが、現在のところ詳細は明らかではない。一方、ウェブOSについては、モバイル業界での特許戦争の激化を受けて、特許ともども売却されるか、あるいはHPがそのライセンス供与に踏み出すものと見られている。

 いずれにせよ、PC事業を切り離し、ウェブOS端末事業から撤退することになれば、HPは企業向けのソフトウェア開発やビジネスソリューションに活路を見出していくしかなくなる。サーバー、ストレージ、ソフトウェア、クラウドサービス、ビジネスアナリティックスなどを統合した分野で、IBM、オラクル、マイクロソフトといった強敵に真正面からの勝負で勝つしかない。

 HPは、今回の発表の中で、企業向け検索サービスを開発するイギリスの企業、オートノミーの買収も明らかにしているが、むろんそれだけでは不十分だろう。HPのレオ・アポテカーCEOの古巣であるSAPと合併してサービスの垂直統合を迅速に実現するような大技も必要かもしれない。

 HPの決断は、ポストPC時代の幕開けをくっきりと印象づけた。デバイスは小型化、モバイル化し、しかもそれ単体では意味をなさない。賛否はあろうが、消費者市場と企業向け市場のそれぞれにおいて、大手IT企業は垂直統合型のサービスをパッケージで提供する方向へと再び向かいつつある。

世論調査

質問1 HPが選択肢として検討しているPC事業分離とウェブOS端末事業撤退について、あなたの意見は?





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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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シュンペーターの創造的破壊を地で行く世界の革新企業の最新動向と未来戦略を、シリコンバレー在住のジャーナリストがつぶさに分析します。

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