前回、1994年卒業以降の就職氷河期世代が、引きこもり層の中核になっているという話を紹介した。

 社会には出ていても、自分もいつ、自信を失って、引きこもるかわからない。そんな不安定な気持ちは、この世代の多くの人たちの間に共有されているように思える。

 30歳代の知人の女性が、こんな話をしてくれた。

氷河期世代に自己否定感を蘇らせる“就職難”の呪縛

 ある朝、目が覚めたら、頭の中が自己否定感でいっぱいだった。何もする気になれず、自分はこのまま引きこもるかもしれないと思ったという。

 きっかけは、仕事相手の男性とのやりとり。ビジネス面で見れば、決してその彼が悪いわけではない。

「ただ、私のイヤだと思っていることを、(彼は私に対して)言ったり、やったりしたんです」

 当初、直接やりとりをしていたときは、とくにイヤだと感じたわけではなかった。しかし、仕事相手はその後、彼女の上司に、「(彼女は仕事に)慣れていないんじゃないか」みたいなことを愚痴でこぼしたらしい。

「私の基準でいうと、それは私にとって『イヤだ』と思うことだったんです」

 おまえなんか、仕事相手として認めていない。後で、おまえではなくて、上司に聞くからいい。そんなメッセージだったような気がして、悔しかった。失礼だと思った。

 彼女はキャリアを途中で変え、30代になってから、いまの業界に入ってきた。しかし、そのやりとりで悔しいと感じたのをきっかけに、過去の悔しかった記憶が惹起したのだ。

 自己肯定感は、ひょんなことで、ひっくり返る。

 夜、夢の中でも、自己を否定しようとする自分のトラウマが出てきて、自分自身と闘っていた。