銀行とは、新規でまとまった金額の融資契約を先に締結しておいた。仕事の受注については、長期プロジェクトを増やしキャパシティぎりぎりまで受注していた。これは、クライアント社内の予算を先に押さえてしまうという意味である。

 コンサルティングという仕事は、ショックが起きると真っ先に仕事を切られる可能性が高い。だがこのときは、事前の備えもあり、2008年9月のリーマンショック以降、2009年末まで仕事の受注残を確保できていた。2010年の上半期は実質的に仕事がゼロに近い状況まで落ち込んだが、同業他社と比べれば随分マシな形で危機を乗り切ったと思う。

「あのときが分かれ道だった」
後悔しないために考えるべきこと

 では、足もとはどうか。経済危機が迫っているわけではない。北朝鮮問題も、政治的に平和裏に解決される可能性が十分残っている。ないしは、このままの状態で1年間、何事もなく安定が続くかもしれない。予兆があるだけの状態だ。

 そのようなときに、「まったく想定していなかった何かがある日突然起きる」というリスクに対して、ビジネスパーソンとして何も備えていないのは、実は大問題なのではないか。

 経営者であれば、このタイミングでの投資や大きな支出、個人であればこのタイミングでの転職や大きな買い物は、考えて行うべきだ。べつにそれらを「すべきではない」と言っているわけではない。普段行っていることが、ある日を境にリスクになるかもしれないということを想定した上で動くことが大切ではないかと、問題提起しているのだ。

「慣れ」とは怖いものだ。読者諸氏にも投資や支出、転職などの際に、「北朝鮮を念頭に置いて判断していたかどうかが分かれ道だった」と痛感する日が、ひょっとしたら来るかもしれない。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)