これは使用者にとって都合のいいものでしょうが、逆に中間管理職の皆さんは、上(使用者)と下(労働者)の板挟みとなり、自分のスタンスも定まらず、さぞかし辛いのではないかと察します。

 筆者は日本の年休取得率が低い原因に、雇用契約への低い意識があり、これに大きな影響を与えているのが、この労働者と使用者の兼任文化だと考えています。労働基準法の改正も含め、事業主や経営担当者を除く、管理職を含めた全ての社員が、意識面も労働条件面(休みかた含め)でも、労働者に徹するような環境づくりが必要です。

9割の労働者がフルに年休を取れば、謝る必要はなくなる

 筆者は、日本でも、年休取得率100%の達成は可能だと信じています。そのためには、社員全員が労働者の意識を持ち、雇用契約意識を高めていくことです。これが年休取得に対する権利意識の高まりにつながり、年休取得願いをきちんと出すようになる。仮に会社が拒否すれば、社員は会社の違法行為をきちんと労働監督機関に伝えるようになる。こうした行動をとることで、会社のブラック化を防ぐとともに、年休取得率100%の会社へと導く。

 社員は、休みをフルに活用した旅行、趣味、家族との対話、学びなどを通じ、年休制度の本来の意義である心身のリフレッシュや自己啓発を十分に行うことができます。一方、会社は、全労働者の100%年休取得を前提にした経営を強いられます。その結果、業務・収益構造・体制面での改善やイノベーションへの取り組みを強化することで生産性を高めます。

 これに加え、日本の全就業者の9割を占める6400万人のサラリーマンが、少なくとも1億9385万日分の年休を新たに生み出します(週35時間以上就業する雇用者数3877万人×最低法廷日数10日の5割で試算)。これにより、小売り、余暇・レジャー産業、観光産業、教育産業、インフラ整備業界などを中心に、一定の経済効果も見込めます。そして何よりも、日本の就業者10人のうち9人が、フルに休むことで、年休の大衆化と平等化が実現します。

 ちなみに、この大衆化と平等化が確立したフランスでは、労働者はお客様からの電話に「課長は休暇中、○○日から出社」と事実を伝えることはあっても、決して謝りません。課長は使用者ではなく、労働者だからです。また、お客様であろうが誰であろうが、休むこと(権利の行使)を当然のことと受け入れるからです。この年休とバカンスの大衆化により、休むことは良いこと、休んで当たり前、だから職場のメンバーやお客様に謝る必要がないという、社会と職場の風土が根付くのです。

>>次回『日本は有休取得の義務化より「バカンス大国」を目指せ』は8月16日(水)更新予定です。