
永田公彦
フランスから見える、日本が移民と共生するために欠かせない「3つのカギ」とは?
先の参院選を契機に、移民政策が国民的議論に急浮上したことは歓迎すべき動きです。ですが、これを「選挙だけのトピック」で終わらせてはなりません。日本は今、孤高の島国からグローバル社会への立ち位置を再定義するかつてない岐路に立っています。人口減少が進み、移民小国であり続けることが現実的かどうか…この問いに明確なビジョンと持続可能な戦略で答えなければなりません。本稿では、日本人社会の文化的特性と数世紀もこの問題に取り組む欧州の状況を踏まえ、この日本の未来を左右するテーマについて、筆者の視点から考察します。

日本と同じく欧州でも、気候変動への対応、農業従事者の減少と高齢化、食料安全保障の強化、市民の志向変化(エシカル消費、地産地消、健康等)など「食」を取り巻く環境が急変しています。こうした中、欧州最大の農業国フランスでは、より持続可能な農業への転換を支えるアグリテック(農業革新のための技術)のエコシステムが急発展しています。

バカンスシーズン真っただ中のフランスですが、子供たちも2カ月の夏休みの折り返し点に差し掛かります。彼らには、夏休みの宿題や部活はありません。理由は文字通り「夏休み」だからです。その代わり、どの家庭環境の子供達も普段できない活動をします。一方、中高生を中心に、日本の多くの子供たちは正反対です。夏休み返上で、先生や親から課された学期中の延長線上の活動に励みます。宿題、部活、補習、塾の夏期講習などです。偏差値と受験に偏重した時代錯誤の教育システムに組み込まれ、夏休みに休まない日本の子供たちの将来は一体どうなるのでしょうか?

日本に似て起業文化が希薄だったフランスですが、ここ数年、オールドエコノミーからの脱却が加速しています。2030年までにユニコーン100社との目標が掲げられ、スタートアップ立国に向けた新たなフェーズに入っています。

世に氾濫する「ニッポン後退論」は軽く聞き流し、「諸外国に抜かれまい、抜かれたら抜き返す、そのためには変わらなければ」との力んだ発想は捨てるべきです。むしろ日本人は自分たちを再認識し、無理せず自然体で独自の進化を遂げればいいのです。そうすることで、人々の生活と地球環境を豊かにする、持続的で高付加価値かつ高貴な社会モデルができ、世界もこれに注目するでしょう。

SDGs、ESG投資などが注目され、社会(ヒト)と環境(自然)を気遣うサステナブルな事業経営を目指す企業が世界的に増えています。こうした中、企業にとって社会の分野で最も身近で重要なヒトは社員です。環境対策や消費者保護もさることながら、まずは社員が、人権を守られた働きやすい環境で生き生き仕事ができているか?これを問い続けることが企業の社会的責任の基本です。

欧州では市民の9割が環境と社会に責任ある消費行動をしているといい、パッケージフリーな小売形態がフランスを中心に拡大しています。バルクで店に運ばれてきた包装されていないオーガニック食品等を、来店客自ら持参する容器に必要な量だけ入れてもらう「量り売り」をする専門店やスーパー内コーナーです。

SDGs(持続可能な開発目標)のSとDに当たるサステナブル・デベロップメント(持続可能な開発)の概念は、14世紀にフランス国王フィリップ6世が公布した林業規定に端を発するという説があります。これは時の権力が国民に強いた命令でしたが、650年以上を経た昨今は、国民が権力(政府や経営者)にサステナブルな社会づくりを迫るに至ってます。

閉じこもり生活でも心の健康を保つための「あなたの課題」整理法
前回コラム「コロナによる閉じこもり生活は、人の心を痛めつける」では、閉じこもり生活が、世界各地でどのように人の心を痛め社会問題化しているかについて客観的事実をお伝えしました。これに対し本稿では、こうした心の健康に影響を与える要因を整理し(原因を知る)、その悪化を抑えるために筆者も含め一般市民ができることを取捨選択する方法と1つの対処法をお伝えします。

不安、イライラ、怒り、ヒステリー…外出・移動・仕事等の制限が、人の心に悪影響をもたらすことは、多くの学術研究や民間調査が指摘するところであり、パリで1カ月以上の軟禁生活の渦中にいる筆者の実感でもあります。今回のコロナ渦のさなか、世界各地でアルコールやタバコへの依存、DV、児童虐待、自殺の増加が懸念されています。これは日本でも目をつむっていられない問題です。本稿では、難禁生活の長期化が人々の心をどう悪化させるか、その結果どのような社会問題が起きているかについてフランスを中心に客観的事実をお伝えします。

第35回
フランスでは、政府による厳しい外出制限令により、先月17日、推定8割以上の国民が軟禁生活を始めました。その直後の世論調査では、国民の96%がこの政令を歓迎、85%がこれをもっと早く出してほしかっと回答しています。一方、今週火曜日からこれが2週間延長され、少なくとも4月15日まで続きます。長期戦に入りこれまで同様、多くの国民が平常心を保ちつつ粛々と軟禁生活を続けられることが望まれます。

第34回
新型コロナウィルスの猛威により、世界50カ国以上、筆者も含め約17億人にのぼる自宅隔離者(23日AFP試算)にとって、外出禁止令は、性生活も含めたスキンシップやカップルの在り方を再考する絶好の機会になります。ここフランスでも、タッチレス、テレセックス、間接セックス、動画パンデミック、コロナスートラ、離婚リスク……こうした発言や議論がメディア等を通じ専門家や市民の間で高まりつつあります。

第33回
イタリア、スペインに続き、全国で外出と移動を厳しく制限する新型コロナ封じ込め策に転じたフランス。社会全体で不安と緊張が高まると同時に、人としての優しさや温もりを感じる行動や光景も目立ってきました。

第32回
異文化マネジメントの視点に立つと「ゴーン氏の逮捕・逃亡」と「ダイヤモンド・プリンセス危機」の間には、共通する4つの日本人社会の文化特性が見えます。これらは、例え国内では美徳であっても、国際案件への対応や企業のグローバル事業等では弱点となります。その改善に向けた問題意識の共有と改善努力が期待されます。

第31回
昨今日本でも、非人道的な暴力事件が目立つこともあり、人の心や社会の状態が悪くなっていると感じる人が多いといいます。確かにこうした劣化を示すデータは多くあります。その背景にあるのが格差の拡大です。

第30回
前例や常識を当てにできない現代社会、アーティスト的な規格外の起業家が求められている。今回紹介するジェロームとジョーンズは、そのタイプだ。世界最高の音が出るスピーカー創りのため、安定と過去の栄光にしがみつくことなく、4年前にVoxline社を立ちあげた粋な男たちだ。

フランス全土で燃料税引き上げへの反発から11月17日に始まったデモが今もなお続き、一部は暴徒化の様相まで呈している。「市民革命発祥の国」で起きた、日本人にはもうひとつ実感が湧きづらいこのデモの背景や意味を解説する。

ゴーン氏逮捕の報道をフランスから見ていると、日本では専門家、評論家、一般の方々が発信する情報量がとてつもなく多いと感じます。筆者が注目する点は、なぜ今回のゴーン氏逮捕が日本社会で、ここまで一斉にネガティブなトーンで、高い関心を持たれているのかということです。一企業の一経営者、しかもいまだ容疑に過ぎないにもかかわらずです。

前回に続き、株式会社ワーク・ライフバランスの創業メンバー大塚万紀子氏と、Nagata Global Partners代表パートナーでパリ第9大学非常勤講師も務める永田公彦氏の対談(全3回)をお送りする。最終回は、働き方改革について、成功する企業や経営者の特徴、“他人ごと”から“自分ごと”になってきていること、また、今後は、個人が成熟度を高めるとともに、雇用システムも、より個人の意思を反映したものにすることの重要性についてお伝えします。

前回に続き、株式会社ワーク・ライフバランスの創業メンバー大塚万紀子氏と、Nagata Global Partners代表パートナーでパリ第9大学非常勤講師も務める永田公彦氏の対談(全3回)をお送りする。2回目は、日本におけるお客様とサプライヤー関係のあり方、完璧や忖度という呪縛、恥と型の文化など、世代交代が進むことで、日本人社会の文化が再構築される可能性についてお伝えします。
