こんな風景は今や、全国の山々に広がっており、少しも珍しくはない。近年、大雨のたびに洪水や土砂災害が起きているのには、森林荒廃による「緑のダム」機能の低下が大きく影響していることがわかっており、小菅村では、「新たな源流文化の創生」と一体化した森林再生への取り組みを官民協働で進めてきた。

山梨県北都留森林組合参事/NPO多摩源流こすげ理事 中田無双さん

 山梨県北都留森林組合の中田無双さんは、山村の基幹産業である林業の立場から、長年に渡って活動を牽引してきたリーダーの一人だ。生粋の村民ではない。大手書店の営業マンを辞し、家族を連れて移住してきたIターン組だが、だからこそわかる地域の価値があり、できることがあるという。

「Iターンに至った理由の一つは、自然を守りたいというピュアな気持ちでした。日本の森林の4割は人工林ですが、そのほとんどが、今手入れしなければ手遅れになってしまうという危機感を抱いたのです。あとはやはり、山村がどんどん元気を失っていくのが耐えられなかった。僕らみたいな、都会で生まれ育った人間が山村に入り、都会と山村の通訳や、橋渡し的なことをやったらどうだろうと考えました」(中田さん)

 当時、北都留郡の森林組合では、全部で40人いる作業員の半数が、中田さんのようなIターン組だった。

「小菅村は懐が深いんですね、移住者をこれほど積極的に受け入れている地域は珍しいと思います」(中田さん)

 東北や大阪など、全国から来た仲間たち、村役場の人たちや源流研究所の中村さん、林業を応援する大学の先生や学生たちも加わって、「どうしたら林業と自然保護を両立させ、山村の人々が食べて行けるようになるだろう」など、酒を酌み交わしつつ闘わせた議論の中から、2009年には、『NPO法人多摩源流こすげ』が誕生。森林再生はもとより、山村活性化につながる特産品の開発や普及活動、体験教室等のプログラムを通して源流の森への理解を深めてもらう事業など、広く幅広い活動を行い、成果をあげてきた(春と秋には、『源流沢歩き』も実施)。