立場主義が
ブラック企業を産む

 このような社会構造ですから、日本人は皆、よりよい立場を手に入れようとがんばります。「家柄」と「学歴」とが、良い立場につくための重要な要素です。あとは「真摯さ」。真摯さを辞書で引くと、「ひたむきさ、物事を一心に行うさま」とあります。この美徳は、与えられた役を必死にこなすことであり、主体的な生き方を意味しません。

 自分で考え、自分の信念に従って行動する人を、日本人社会では「真摯」と褒めたりはしません。自分で考える人は、必ずしも立場に割り振られた役の通りには動きませんから、「みんなに迷惑をかけて身勝手だ」と責められます。

 ブラック企業では、非人道的な労働を強いて(=役を与えて)、労働者が「もうできません」と悲鳴を上げると「みんなに迷惑がかかる」(=与えられた役をこなさず、他人の立場をおびやかしている)と責めます。

 これは、人権の観点から見れば当然、酷い話ですが、立場主義の観点から見れば「正論」です。つまり、ブラック企業の言い分は、日本社会では正当性を帯びているのです。私は、日本からブラック企業がなくならないのは当たり前だと思っています。立場主義の国に民主主義の価値観を当てはめれば、日本そのものがブラック国家だからです。