「母が『もう巻き込んでるじゃない!』と叫びました。そこからは修羅場です。母は思いのたけを絶叫し続け、父をなじりました。父は言われるがままでしたが、母の言葉は強く、はたで聞いているだけで耳を覆いたくなるほどのものでした。『どこの誰とも知らない女の性病を人にうつした不潔な男』や『出会ってからずっとだまされ続けてきた私の40年間を返してほしい』と言われたとき、父はうなって拳を床に打ち付けたりコップを壁に投げつけたりしていました。そんな両親を見たのは生まれて初めてです」

 母の発散は30分続き、最終的に泣いて突っ伏した。その様子をしばらく見守っていた父だったが、やがて黙って立ち上がるとふらついた足取りでどこかへ出かけていった。自分は母のそばについてやるべきだと思い、Cさんは部屋の片付けや母に茶を入れてやるなどして過ごした。母に気づかれないように父に連絡を入れて所在とどうするつもりかを尋ねると「自分なりにけじめをつける」とのこと。自殺を心配しましたが、確認すると「そのつもりはない」とのことで、あとはなるようにしかならないと思い、母のケアに専念しました。

 その晩、父は自慢の髪をすっかり丸めて帰宅した。さらに、車を買うためだった貯金のほぼ全額で母へのアクセサリーを買っていた。そして父は、息子の前で母に土下座して「心の底から申し訳ないと思っている。許してくれなくて構わないから、どうか離婚だけは思いとどまってほしい」と懇願したのだった。

 その場で「考えさせてほしい」と答えた母だったが、翌日「今後許せるように努力していく」と父に伝え、二人はひとまずの和解を得たのだった。

 帰省は一日、あるいは数日のまとまった休暇を消費して行われる。義理の両親への顔見せや、実家でゆっくり過ごすことなど、各々の目的を胸に帰省するわけだが、それが心休まる休暇になるとは限らない。久しぶりに会う家族が何か問題を抱えていたら、その問題に冷静に対処できるのは、外の人で、かつまったくの部外者ではない「帰省した人」だけかもしれない。帰省で起こる修羅場は、「帰省した人」がきっかけとなって、問題が顕在化したものということもできるであろう。