リニューアルの2つ目のポイントが、目玉でもある味の改良だ。中身の進化は、生茶のポジションを明確にすることから始まった。

 緑茶の味の指標は、主に2種類ある。「渋み・苦味」と「旨み」だ。渋みが強ければ、急須で淹れたようなオーソドックスなお茶らしい味わいになるし、旨みが強ければ、甘さなどが際立つ味わいになる。

 生茶は誕生当初から、渋みと旨みのバランスが取れた、すっきりとした味わいが特徴だった。売り上げが底にあっても、このスタイルを変えたくなかった。

 サントリー食品インターナショナルの「伊右衛門」しかり、日本コカ・コーラの「綾鷹」しかり、競合は、老舗ののれんに加え、渋みが強い“急須で淹れたような”お茶らしい味わいという、緑茶の“伝統的世界観”のイメージが押し出されていた。

 他社との差別化を図るためには、この生茶のすっきりとした味わいという路線を崩さず、その青々しさをより高いレベルに引き上げる新たな技術を開発することが必要だった。

 そうして完成したのが、「茶葉まるごと微粉砕」の技術だ。セラミック製のボールミルを入れた粉砕機の中で、かぶせ茶を砕くように混ぜ合わせることで、非常に細かいお茶の粉を作り出す。この微粉砕茶葉を加えることで、コクと軽やかな余韻が生まれるのだ。

「この粉末の有無が、リニューアル前後の最も大きな差です」と川口氏は語る。

 かくして、中身も外見も生まれ変わった生茶。16年3月の発売と同時に大きな反響を呼び、発売初年度の販売数量は2500万ケースを達成。当初の予想の1.5倍もの数量で、記録的な大ヒットとなった。

 それまで清涼飲料事業全体が不調で、低収益に苦しんでいたキリン。生茶のリニューアルがきっかけとなり復調し、社内がにわかに活気づいた。

 だが、大きな波を起こした生茶リニューアルをライバルがただ黙って見ているはずはなかった。