7回と9回のプレーは
偶然が重なって起きた

 7回裏に起きた一塁塁上の接触プレーがそうだ。走者のベースの踏み方にもセオリーがある。内野ゴロで一塁を駆け抜ける時は、ベースの右手前を左足で踏むのがセオリー。これなら一塁手の脚と接触することもないわけだ。ただし歩幅が合わなかった場合は右足でベースを踏んでも構わない。今回の接触はこのケースで起きた。セーフになりたい一心で必死に走ったら、右足でベースを踏むことになった。しかも最後の一歩はかなり大股。勢い余って振り上げた左足が一塁手の脚に当たってしまったということだろう。

 大阪桐蔭サイドの人が見れば、この動作は故意に蹴っているように映るかもしれない。だが、走者の方も足がひっかかって転倒している。全速力で走ってきて転倒すればケガをする可能性もあり、そんなリスクを負ってまでするプレーではない。また、そうした接触プレーがありがちな選手なら、地方大会の時点で指導を受け、改善されているはずだ。

 ネットでは9回のベース踏み損ねとこの接触を関連づけて問題にしているが、7回の時点で9回にそんなことが起きることは想定できるはずもない。故意でできることではないのだ。

 9回のベース踏み損ないのシーンでもセオリーとは異なるプレーがあった。二死1・2塁でショートゴロ。ランナーが埋まっている状況だから二塁でフォースプレーができた。補殺はより近い塁で、がセオリーだから、この時は2塁でアウトを取ればよかったのだ。一塁手がベースに足を置く体勢を取らなかったのは、このセオリーが頭をかすめたからかもしれない。

 ところがショートは二塁に投げず、一塁に送球した。しかも、ボールはわずかにライト側にそれた。これを捕ればゲームセットだという意識から大事に体の正面で捕球しようとして、ベースから足が離れた。こうした偶然が重なって起きた、通常ならありえないミスだったのではないだろうか。

 大阪桐蔭と仙台育英といえば高校野球界のトップレベルの実力を誇る名門。ベンチ入りしている選手は少年時代から才能を認められてきたエリートばかりで試合経験も豊富だ。そういう選手であっても、勝敗を分ける場面になれば緊張し、セオリー通りのプレーができなくなる。そして思わぬドラマが生まれるのが高校野球の面白さだ。

 ベース踏み損ないのミスをした一塁手は試合後、報道陣から7回の接触による負傷の影響はあったのかと聞かれ「ないです」と答えたという。ミスを受け止め、言い訳めいたことを言わない姿は立派だ。あの接触も同じグラウンドで戦った者同士、全力プレーをした結果として生じたことだとわかるのだろう。

 外で見ている人間が、勝手に関連づけてストーリーをつくり、誰かを悪者に仕立て上げるのは、やはりおかしいと言わざるを得ない。

(スポーツライター 相沢光一)