では、無用な計算違いや偶発的要因に基づく軍事衝突を避け、交渉に道筋を開くためにはどうすれば良いのだろうか。

 最も必要なのは関係国の認識の共有だ。

 このままいけば、上に述べたような理由で、誰も望まない軍事衝突に至る蓋然性が高まることについての認識の共有である。

 さらに具体的な交渉条件などの設定に向けて行動する前に、少なくとも米国・中国・韓国・日本の四ヵ国が、水面下で対北朝鮮アプローチについて徹底的な協議をする必要がある。日本もこれまでの北朝鮮との接触に基づいて、有益な意見を述べることができるはずだ。

まず米中韓日で認識共有が重要
本格的な協議交渉は6ヵ国に戻れ

 その際に留意すべきは、これまでとは脅威のレベルが圧倒的に上がっていることであり、一方では、少なくともこの四ヵ国間には共通の前提ができつつあることだ。

 即ち、米国のティラーソン国務長官が述べた北朝鮮の核放棄に対応する「四つのNO」は中国も含めた四ヵ国の共通認識となり得る。

 北朝鮮の体制変換を求めない、政権の崩壊を企図しない、朝鮮半島の統一を加速する意図はない、米国が38度線を越えて軍を派遣する口実を求めないという四つの点である。

 このような共通認識がまず四ヵ国で確立されれば、北朝鮮との交渉を本格化させることは可能だろう。北朝鮮を意味のある交渉に引き出すための中国の役割も重要だ。もちろんこのような認識に基づき交渉を行い、究極的に北朝鮮の核放棄を実現するのは長い道のりだろう。

 当初のきっかけは米朝の直接的な話し合いであったとしてもかまわないのではないか。

 しかし本格的な協議交渉は、北朝鮮とロシアを加えた「6ヵ国協議」に戻ることが好ましい。朝鮮半島の平和と安定に直接的な関わり合いを持つ6ヵ国の参加は、合意の安定性を担保するうえで不可欠だからだ。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)