全自動車メーカーに配慮した<br />「新燃費基準」の落としどころ水面下では、各メーカーによる激しい攻防が繰り広げられた
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 来年度をメドに導入される乗用車の「新燃費基準」の原案が明らかになった。2020年度の基準は、09年度の実績比で24.1%の燃費改善を図り、1リットル当たり20.3キロメートル走行する、というもの。欧米を上回る燃費基準となったことに、自動車メーカーは、「ハードルが高過ぎる」「達成できないメーカーは脱落し業界再編の呼び水になる」と、表向きは悲観的な反応を見せている。

 原案策定へ至る過程で、メーカー各社は自社に有利な基準となるよう経済産業省、国土交通省へ水面下で働きかけた。メーカーによって車種の展開の幅が異なり、メーカー間で利害関係が一致しないからだ。結果的には、経産・国交省は、あらゆるメーカーに配慮した基準、つまりは、「燃費基準の導入で存続が危ぶまれる企業が出てこないような基準」(経産省幹部)で着地させた。

 配慮のポイントは二つ。第1に、企業別平均燃費基準方式が採用された。企業別に車種の燃費を加重平均して基準をクリアしているかどうかを判断するもので、各メーカーは得意な重量区分(全部で16区分)で基準を大きく上回ると、未達の区分のマイナスを相殺できる。「財務体質が脆弱な下位メーカーや重量車種を多数抱えるトヨタ自動車も歓迎しているはず」(自動車メーカーエンジニア)という。

 第2に、新基準では「電気自動車(EV)」「プラグインハイブリッド車」は評価対象外となった。もっとも、それらが優れた燃費効率を達成できれば、当該企業のガソリン車が基準未達となっても免除される措置が検討されている。

 行政が配慮した背景には、世界の環境対応車の“グローバルスタンダード”が定まっておらず、低燃費車、ハイブリッド車、EVなど多様なクルマが乱立していることがある。どの環境対応車が世界市場を席巻することになっても、日系メーカーが覇権を獲得できるよう選択肢を残しておく狙いがあるようだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

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