社長の「長期政権」はなぜ会社にとって危険なのか

意外に多い長期政権
戦略実現に必要な期間とは

 驚異的な長期政権というのが世の中にはままある。いや政治の話ではない。企業トップの在任期間の話だ。

 ジャック・ウェルチは20年間GEのCEOだった。2001年からその後を引き継いだジェフリー・イメルトも、在任16年だった。本邦では、フジテレビの日枝久氏が29年、JR東海の葛西敬之氏が社長になってから22年。読売新聞社の渡辺恒雄氏も25年もの長きにわたりグループの長として君臨した。キヤノンの御手洗冨士夫氏は1995年から2006年まで約10年社長を務め、一旦は会長に就任したものの、2012年から16年まで社長を兼ね、現在もCEOを務めている。対照的に官公庁の事務次官の任期は1~2年が普通で、4年ですら異例だ。

 社長の在任期間が短すぎる場合、長期的な視野に立って成長を見据えた経営をすることができない。たとえばほとんどの非オーナー大企業の社長の任期が4年か長くて6年であり、かなりの短期間といえる。何かをやり始めたとしても、自分の任期中には結論が出ない程度の長さでしかない。何もせず「大過なく過ごせればよい」と思う社長がいてもおかしくない。

 アメリカの大統領は再選されて、二期目の任期2年目を過ぎれば、世間の関心が次の選挙に移るため、「レームダック」、つまり「死に体」、「役立たず」状態に陥ると言われる。ひどい言われようだが、一方で二期目の2年間が、もっとも力を発揮できる時期でもある。8年の任期のうち、最初の4年間は地ならしで、5、6年目でやっと政策を実行できるというわけだ。

『戦略不全の論理』や、『経営は十年にして成らず』(ともに東洋経済新報社)などを著した三品和広・神戸大学大学院経営学研究科教授は、まともな経営をするためには十年の大計が必要だと説いている。もちろん、一律に在任期間を長くせよという意味ではないにせよ、最低でも在任期間は10年くらいが必要ではないかと問題提起をしている。