数々のスクープを飛ばし「文春砲」という言葉まで誕生した『週刊文春』。編集長の新谷学氏は自身の仕事術をまとめた著書(『「週刊文春」編集長の仕事術』ダイヤモンド社刊)が発売されるなどビジネス手腕にも注目が集まる。既存メディアがウェブでのビジネス展開を模索する中、『週刊文春』はウェブ上でどのように「文春砲」を放つのか。またその勝算は? メディア事情に精通する田端信太郎・LINE上級執行役員を対談相手に迎え、語ってもらった。
週刊文春のスクープ記事を
LINE NEWSで配信
――今年1月から、文春砲が毎週LINEに届くという有料ニュース配信サービスに共同で取り組んでいますね。
田端 ええ、LINE NEWSで展開する有料記事サービス「Premium Article」の第1弾です。週刊文春のLINE公式アカウントを友だちに追加すれば、LINEで毎週スクープを見られるようになります。週刊文春の発売前日に「スクープ予告」が届き、気になったら事前に予約購入すれば、全文が発売当日に届くという仕組みになっています。
新谷 まだまだ試行錯誤の連続で、どうやってビジネスに結びつけていくのかを模索している状況ですから、本日はそのあたりについてもご教示いただければ幸いかと……。
田端 こちらこそ、よろしくお願いいたします。新谷さんの著書を拝読いたしましたが、その中にも例えば、次世代テレビの解像度である4Kとか8Kとかいった話ばかりがされているが、技術的な映像フォーマットそのものにこだわる意味はない、というお話が出てきましたね。僕も新谷さんと同感で、そのようなフォーマットなんてどっちでもいいとつくづく思っています。とかく業界人は、そういった類の話を好みがちですけど。
新谷 ホント、好きですよね。
田端 フォーマットよりも、もっと目を向けるべきことがあります。
新谷 もはや、情報の流通経路というか、情報空間そのものが従来とは決定的に変わってきているのは厳然たる事実なので、まずはいかにしてそれに対応できるかどうかという話ですね。
田端 僕も『R25』をやっていたからよくわかるのですが、やはり週刊誌の編集作業というものは、長い歴史を通じて編集部内で1週間の生活リズムが完全に確立されていますよね。まずは編集会議があり、取材を進めてその成果に基づいて誌面作りが固まり、ゲラができあがって校了に向かって突き進んでいくという一連の流れというか、リズムが完成しているわけです。その点、デジタルの世界はまだ無秩序というか、流動的というか、柔軟というか、「特ダネだ!」ってゴーを出せば、その瞬間に公開できるわけじゃないですか。
新谷 確かに、そこの部分は大きく違っていますよね。だから、長く紙媒体に関わってきた出版社にとって、デジタルの分野に進出していくことにはそういった面での覚悟が求められるわけです。「24時間戦えるのか?」ということが問われてくるので、まずは意識改革から始めなければなりません。