「1on1」の効果をどうやって計るか

 また、他の切り口の質問も数々ありました。

「部下を成長させる上司と、事業を引っ張る上司は分けるべきか。分けるとどういう組織になるのか」(1on1導入する際の組織の課題について)

「いわゆる「トップダウン」や「人事部」発信でないと、組織全体への導入は難しいでしょうか?一部で進めても部分最適になって終わってしまう?一部から上手に全体に波及させることは…?」(1on1導入する際の組織の課題について)

「人事という立場で、社員のことを100%信頼することはできるのでしょうか?」(人事部門のあり方について)

「ヤフーの管理職の定義を変えた後、ヤフーの成長性や利益など、なにか目に見える変化はありましたか?」(1on1の効果について)

 いただいたご質問については、質疑応答コーナーである第3部でできるだけ回答差し上げたかったのですが、残念ながら時間の関係上、ほんの少ししか取り上げることができませんでした。今後の連載の中でヤフーなりの回答を出していけたらと思っています。

 最後に取り上げた「1on1の効果について」は、会場でも言及させていただいたので、こちらでも簡単に紹介しておきます。

 私からは、「1on1のお役立ち度」を尋ねるアセスメントを実施して検証してきたことを説明させていただきました。シンプルに「あなたと上司とでやっている1on1は、あなたにとって役に立っているか」を、以下の4段階で尋ねたものです。

1.とても役立っている
2.まあまあ役立っている
3.あまり役立っていない
4.まったく役立っていない

 このアセスメントは導入4年目に入った時に実施したのですが、選択肢の1と2で90%を占めるという結果になりました。

 全員から賛同が得られたわけではないですが、ここまで来ると、会社が強制的に指示する必要はなくなってきます。社員が「会社としての1on1カルチャーは止めなくてもいいよ」と言ってくれたようなものです。

 実際それ以前に同じ問いで社員に尋ねたことはありませんでしたが、肌感覚としては、導入1~2年くらいのところで調査していたとしたら、この数字は得られなかったと思います。書籍で紹介しているような、いくつかのキーとなる施策や条件がうまく組み合わさって、徐々に現場での効果実感につながっていったと考えています。

 一方、本間からは「成果を何か数値で示すような“KPI至上主義”は好きではない」としながらも「ここまで5年、1on1が制度として続いているという事実が、役に立っていることを証明している」、とコメント。この回答の背景には、人事制度を刷新して以降の5年間、数としては3ケタに及ぶさまざまな施策にトライしてきましたが、今でも残って継続されているものは僅かだ、という事実があります。

 私たちの学びのポイントは、いくら会社や人事が指示しても、現場で流行らないものは続かない、ということです。淘汰の中で残った一つが、この1on1だったということです。