日韓断交をすれば
統計以上の損が発生する

 韓国内には日本企業の資産も多いという。

「15年の日本の対韓投資残高は約3兆7000億円でしたが、日本企業が韓国に進出して得た利益を日本に持ち帰らず、韓国内で新たに再投資に回すケースも多い。そう考えると、韓国経済が混乱すれば統計以上に損害が出ると思います」(平川氏)

 さらに近年、第三国での資源開発やインフラ整備などでも日韓企業の連携が増加していることから、域内全体の経済低迷を招く恐れもあるという。

「そもそも日韓の貿易や投資関係は国同士の国策というよりも、あくまで民間企業の経営戦略の結果です。会社レベルでいえば、損もしていないのにわざわざお得意さんとの取引を止める必要がありません」(平川氏)

 また、モノとカネが移動すれば、当然ヒトの往来も活発となる。日本政府観光局調べによると、昨年の訪日韓国人の数は509万人で、中国に次いで2番目に多かった。観光庁の報告では、旅行消費額で見ても中国、台湾に次いで、韓国は3577億円を日本に落としているのである。

 平川氏は、日韓断交論を“荒唐無稽”と一刀両断し、早急に経済協力の必要性を訴える。その一つが、貿易や投資の自由化・円滑化、知的財産権の保護、観光促進などを包括する経済連携協定(EPA)の締結である。

 産官学からなる「日韓FTA共同研究会」の報告によれば、日韓EPAの締結によって日本のGDPは約0.04~0.12%増加するとの試算を引用している。さらに「独立行政法人経済産業研究所」は、日韓に中国とASEAN10ヵ国が加われば、日本のGDPは、1.04%も増加するという試算も発表している。

「現在、日本、中国、韓国は、互いに政治問題を抱えていて3ヵ国間を包括したEPAを締結できていない状況(中韓のみ2015年にFTA発効済)ですが、ASEANとはそれぞれがEPAを締結しています。ここでもし日韓が先行すれば中国も追随せざるをえないでしょう。そうすれば、現在交渉が行われている東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が実現し、日本は東アジアという巨大なマーケットをフル活用できるようになるのです」(平川氏)

 今回は日韓断交による経済的デメリットの一部にフォーカスしたが、近年、日本人はこと韓国に対してはしばし合理性を失いがちともいえる。政治についても同じで、例えば北朝鮮を巡るミサイル・拉致問題などにおいて、韓国と政治協力をしないという選択肢はありえないし、何よりもアメリカがそれを許すはずがない。現実的には、ビジネスライクに粛々と“大人の対応”をしていくことが、日本人の民度であり美徳になるのかもしれない。