不動産のやばすぎるクレーム「絶対NG行動3選」とは?
不動産業界は「クレーム産業」とも呼ばれます。クレームにどう対応すればいいのでしょうか。本記事の書き手は棚田健大郎さん。1年間必死に勉強したのに宅建に落ちた経験をきっかけに、「勉強が苦手な人でも続けられる方法を作ろう」と決意。棚田さんの勉強法をまとめた『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の刊行を記念して、本記事をお届けします。
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不動産のやばすぎるクレーム「絶対NG行動3選」とは?
不動産業界は、ときどき「クレーム産業」と呼ばれます。言い方は強いですが、現場にいる人ほど「まあ、分かる…」となりやすいのも事実です。不動産は日用品と違って高額で、仕組みも契約内容も複雑です。しかも賃貸でも売買でも、契約したら終わりではなく、住み始めてから騒音や水漏れなどのトラブルが起きることも珍しくありません。だからこそ「そんなの聞いてない」「知らなかった」というズレが起きやすく、クレームが生まれやすい構造があります。
どんなクレームが多い?
実際に管理の現場で多いのは、まず騒音や生活マナーの問題です。夜中まで大声で騒ぐ、上階の足音がうるさい、ゴミ置き場が臭い、といった類いです。原因は、単身契約のはずなのに同居人が増えている、ペット不可なのに勝手に飼っている、そもそもマナーを守らない入居者がいる、などさまざまです。言ってくる側は「早く解決してほしい」という一心ですが、本人に直接言うと逆恨みされそうで怖い。だから管理会社に連絡が来ます。注意しに行く側は、共同生活の最低限のルールを守れない相手に対応しなければならず、精神的にきつい仕事になりがちです。
設備トラブル、敷金トラブルも多い!
次に多いのが設備トラブルです。排水管や防水の不良から水漏れが起きると、部屋が水浸しになるだけでなく他の階まで巻き込む可能性があり、入居者からすると重大事故です。ここで揉めやすいのが「修理費は誰が払うのか」という話で、契約書上の設備扱いか、残置物・サービス品扱いかで負担が変わることがあります。事前の説明が弱いと、退去時や故障時に一気に火がつきます。現場確認に車で行ったら駐車場がなくて路上駐車になり、それ自体がクレームになる、という踏んだり蹴ったりのケースもあります。
そして退去時の敷金トラブル。原状回復費用について、入居者がきちんと理解できていないまま退去を迎え、「敷金は全額返ってくると思っていた」「そんな説明は聞いていない」と揉めるパターンです。加えて、入居者からのクレームだけでなく、オーナーから「入居者が決まらない」というクレームも来るので、現場は板挟みになりやすい。これが、不動産でクレームが多いと言われる理由でもあります。
ただ、ここからが大事で、クレームそのもの以上に“対応のしかた”で地獄になります。不動産のクレームは、下手に動くほど燃えます。特に「謝れば済む」は通用しない場面が多い。そこで今回は、クレームを受けたときに絶対にやってはいけないNG行動を3つに絞って整理します。
NG行動① 反論っぽく聞こえる言葉を使う
まず一つ目のNGは、反論っぽく聞こえる言葉を使うことです。「でも」「だって」「とはいえ」みたいな言葉は、本人にそのつもりがなくても、相手には“言い訳”“反論”に聞こえます。さらに最悪なのが、相手が話している途中で被せてしゃべることです。クレームを言ってくる人は、怒鳴りたいというより「適切に対処してほしい」だけのケースもあります。でもそこで被せられると、「聞く気がない」「こっちをバカにしている」と受け取られ、ただの不満が怒りに変わります。まずは相手に話し切らせる。これがスタートラインです。
NG行動② いきなり謝る
二つ目のNGは、いきなり謝ることです。意外に思うかもしれませんが、不動産の現場ではこれが本当に危ないです。もちろん、悪いことをしたら謝るのは当たり前です。ただ問題は「何に対して謝るのか」を見極める前に、とりあえず謝ってしまうことです。安易に謝ると、こちらがミスを認めた形になり、よくよく聞いたら自分側に非がないケースでも、相手が強く出てきて要求がエスカレートします。謝らなくていいことに謝ると、クレームは小さくならず、むしろ大きくなります。不動産では特に「謝れば収まる」という発想が裏目に出やすいので注意が必要です。
NG行動③ 嘘をつく
三つ目のNGは、嘘をつくことです。ミスを指摘されるのは誰でも嫌ですし、とっさに守りに入りたくなります。でも「知りませんでした」「聞いてません」など事実と違うことを言うと、後で必ず詰みます。嘘がバレた瞬間、相手はクレーム相手としてだけでなく、「信用できない人」「会社としてどうなってるんだ」と見てきます。怒りの種類が変わるんです。これは顧客に対しても、社内で上司に報告するときも同じで、とにかく嘘は最悪の選択肢です。
では、どうすればいい?
じゃあ、どう動くのが正解なのか。基本は「まず聞く」「事実を整理する」「結論から言う」です。こちらに過失があるなら、話を聞き切った上で、過失のポイントに絞って謝罪し、改善策までセットで伝える。たとえば相手が「連絡がなかった」ことに怒っているなら、「連絡をしなかった点」についてピンポイントで謝り、次からは何をいつまでに連絡するのかを具体的に言う。広く曖昧に謝るのではなく、刺さっているところにだけ謝るのがコツです。逆にこちらに過失がない場合でも、まずは話を聞いて事実確認をしてから、客観的事実をゆっくり伝える。それでも通じないときは、感情で勝負せず、反応せず、相手が吐き出すのを待つ。反論で勝とうとすると長期戦になり、得るものがありません。
最後にもう一つ、気持ちが楽になる話をしておくと、トラブルが起きても実際にクレームとして言ってくる人は全員ではありません。だからこそ、クレームはしんどい反面、改善点が見える貴重なサインでもあります。そして不動産のクレームの多くは、担当者個人が悪いわけではないものも多い。騒音や水漏れは、あなたが起こしたわけではありません。それでも困っている人を助ける仕事だと割り切れると、精神的な負担はだいぶ減ります。慣れれば、必要以上に恐れるものではありません。
(本原稿は、『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の著者の寄稿です)







