(1) 年収800万円(世帯年収1500万円)までは、収入が増えるほど幸福度は増す。
(2) 金融資産1億円までは、資産の額が増えるほど幸福度は増す。
(3) 収入と資産が一定額を超えると幸福度は変わらなくなる。

 もちろん世の中には、ギャンブラーや投資銀行家のように稼いだお金の額が成功=自己実現の基準になる職業もありますが、一般的には、たんなる電子データにすぎないものにそこまで執着することはできないでしょう。

 世界最大の富豪であるビル・ゲイツは、早い時期から「金持ちで得することはあまりなく、自分の子どもたちに大金を残したとしても彼らのためにならない」と明言して、社会福祉財団を立ち上げました。もっとも成功した投資家で、ゲイツに次ぐ大富豪であるウォーレン・バフェットは、死後は財産のほとんどをゲイツ財団に寄付することを決めています。

 フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグも、時価総額450億ドルといわれる保有株の99%を慈善事業に寄付すると発表しました。彼らはきわめて賢いひとたちなので、限界効用がゼロにまで下がってしまった電子データの数字を増やすよりも、それを社会に還元して評判=名声と交換した方がずっと幸福になれるということに気づいているのです。

 ただしこれは、「お金は幸福をもたらさない」ということではありません。さまざまな進化論的・心理学的な理由から幸福になるのはとても難しいのですが、そのなかでもっとも確実に幸福度を上げる方法は、やはりお金持ちになって「経済的独立」を実現することなのです。

(作家 橘玲)