ガス自由化で激しい顧客争奪戦の渦中にある大阪ガス。盤石だったガス事業の先行きに不透明感が出始める中で、どのような成長戦略を描いているのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
今年3月に大阪ガスが発表した「長期経営ビジョン2030、中期経営計画2020」は、まるで別会社に生まれ変わると言っているに等しい、大胆で野心的なものだった。
2030年度、18年3月期にわずか30億円と予想している海外事業の経常利益を20倍の640億円まで拡大させ、連結経常利益全体を現状から3倍の1920億円まで伸ばすとぶち上げたのだ。
これが実現すると、経常利益に占める海外事業と国内事業の比率は1対2。18年3月期のそれが1対20であり、海外事業強化へ大きくかじを切る計画となっている。
大阪ガスはその社名の通り、大阪が地盤のガス会社だ。原料である液化天然ガス(LNG)を輸入し、ガスを精製。それを家庭や企業などへガス管を通して販売する国内都市ガス事業が主力だ。
国内都市ガス市場は、企業などの大口顧客向けは1995年から段階的に自由化されてきたが、家庭向けは規制が残っており、ガス会社は独占的に事業を行える環境だった。そのため大阪ガスの業績は安定しており、財務体質も健全そのものだった(図(1))。
そんな大阪ガスが、自らを一変させる計画を立てた背景には都市ガスの完全自由化がある。17年4月に、家庭向けの都市ガス市場が自由化されたことで、国内ガス事業における全ての規制が撤廃され、完全な自由競争の中で戦うことになったのだ。