大成建設は2000年からの5年間でITコストを30%削減し、情報システムの再構築と業務改革を並行して実施した。一連の改革をCIOとしてリードし、CIOを離れた今も、積極的にIT部門のリーダーに向けて情報発信を行う、大成ロテック常勤監査役の木内里美氏に、CIOに求められる役割について聞いた。

「ITコスト30%削減」を掲げて始まった情報システムの見直し

木内里美きうち・さとみ/大成ロテック株式会社 常勤監査役。1947年生まれ。1969年大成建設に入社し、土木設計部、土木情報技術部長を経て、2001年に社長室情報企画部長に就任。2005年、同社社長室理事情報企画部長兼大成情報システム代表取締役社長。2008年6月から現職。
Photo by Jungae Lim

――木内さんは、土木設計部のご出身ですが、そこからIT部門に移り、メインフレームの廃止やアウトソーシングの導入などの改革を実施して大成建設のIT支出を30%削減されました。

 2000年に、全社横断でITコスト見直しのタスクフォースができました。当初はそこに、土木部門の代表として参画していたのですが、翌2001年に事実上のCIOとして社長室情報企画部に異動し、改革に取り組むことになりました。

 ところが、「ITコストを2005年までに30%削減せよ」という目標だけで、情報システムのあるべき姿については具体化された詳細な議論がされていませんでした。まずは、今後の大成建設の情報システムはどうあるべきかというシナリオを作るところから始めました。

――土木設計がご専門で、情報システムの経験はなかったとうかがいます。いきなりCIOとして全社的なプロジェクトを任され、どのように進めたのでしょうか?

 何もわからない状態から始めたので、土木設計と同じ感覚で進めようとしたのが結果的に良かったと思います。

 まず、全体像をデザインし、それから各パーツのデザインに入りました。土木設計では当たり前のやり方ですが、それまでのIT部門では、全体像のないまま各パーツのデザインを積み上げることが多かったのです。しかしそれでは無駄が多くなりますし、共通コンセプトを貫いたシステムはできません。

――具体的には、どのようにコスト削減を実施されたのでしょうか?

 メインフレームを廃止して、オープンなシステムに移行することで、開発や運用のコストを下げました。また、アウトソースの活用や、ベンダーとの料金交渉も努めて行いました。ベンダーから提示されたソフトウェア保守の費用などは、そもそも根拠がはっきりしない状態で設定されているので、交渉次第でいくらでも下がります。土木や建築での調達では、価格の根拠を突きながら交渉するのは当たり前のことなのに、IT投資ではほぼ言い値だったというのには驚きました。