新型iPhone4S発表のニュースが流れ、その熱も冷めやらぬ翌日、さらなる衝撃が世界中を駆け巡った。米アップルがスティーブ・ジョブズ氏の死去を発表したからだ。数々の革新的な製品を世に送り出し、アップルを時価総額で世界最大の企業へと押し上げたミスター・アップルを失ったショックは計り知れない。
Photo:AFP=時事
テクノロジーの未来に対する慧眼を持った世界的なカリスマ経営者がこの世を去った。
米アップルの公式サイトのトップ画面は、前日に発表されたiPhone4Sの製品紹介から一転。「Steve Jobs 1955-2011」の文字とともに、スティーブ・ジョブズ氏の写真を掲載し、「Appleは先見と創造性に満ちた天才を失いました」と、追悼のコメントを発表した。
各界からも悲しみの声が上がり、オバマ米大統領は「世界は先見の明を持った人物を失った」という声明を発表した。
雑誌「ワイアード日本版」の元編集長で、ジョブズ氏へのインタビュー経験もある小林弘人氏は「企業人としてではなく、スティーブはその類い稀なるカリスマ性と革新を実現する力、そしていい意味でのエゴイズムにより、ITをアートにまで高めた人物。彼の死去はIT業界と人類にとっても痛手であり『彼が生きていたらどうしただろう』としばらくは常に考えてしまうだろう」と言う。
ジョブズ氏は76年に友人とともにアップルを創業(会社設立は翌年)。77年に「AppleII」を発表し、個人向けコンピュータで世界で初めて成功を収めた。その後、マウスを使った操作性やデザイン性の高さで、後のパーソナルコンピュータのひな型ともなった「マッキントッシュ」をはじめ、先進的な製品を生み出すも、期待ほどには売り上げは伸びず、業績悪化に伴う内部対立などからアップルを追われる。
追放後は、コンピュータグラフィックス制作会社のピクサーを設立し、ディズニー映画「トイ・ストーリー」を制作するなど活躍。その間、アップルは米マイクロソフトとのOS競争に敗れ、業績は悪化の一途をたどったが、96年にジョブズ氏は顧問として復帰を請われると、すぐに最高経営責任者(CEO)に返り咲いた。