創業者・出光佐三が生きていたらどうしたか

――経営側が公募増資という手段をとったことについて、どう評価しますか。

 負けるファクターを少しでも削り取ることを考えたら、公募増資は当然の選択肢です。

――既存株主の議決権比率を希薄化するために新株発行するという目的も一部ある中で、公募増資によって増資が裁判所に認められたのは、昨年末に昭和シェル石油株を取得した時の借入金の返済に回すという資金調達の合理性と、公募増資は新しい株主の帰趨がわからないので、そうしたことから主要目的は資金調達であると裁判所が判断したのだと理解していますが、どうでしょうか。

 それが裁判所の言ったロジックですよね。これは私の勝手な推測ですが、どちらを勝たせるかという判断について裁判所は一瞬の迷いもなかったのではないでしょうか。勝たせるには資金需要が絶対に必要で、昭和シェル株式取得のための借入金については返済しないといけないので、これで勝たせて良いと思ったのだと思います。他方で、ベトナムの製油所への投資等は新株発行を行う必要性・合理性にも疑問が残ると判断しているのですが、この判断も併せて存在することによって、外から見た時に裁判所が非常に慎重に見ている佇まいが明らかになります。

 裁判所は「0対100だからこちらを勝たせる」とは普通言いません。「50.1対49.9だけどこちらを勝たせる」と言います。でも腹の中では初めから経営側を勝たせると考えていただろうと推測するのです。

 地裁の決定が出た後に高裁でどうなるかわからないというコメントをされている方もいましたが、私は最初から翌日に経営側が勝つと予測していました。こうした内容の事件で、地裁が「50.1対49.9で高裁の判断を仰がないと危ない」と考える事もないでしょうし、そう考えていたらもっと高裁のために時間に余裕を置いたと思います。裁判所は、表面で言っていることと腹の中は当然違うことがあります。物事に決着をつけないといけない時は割とハッキリしています。

――経営側が勝つと予測した一番のポイントは、どこですか。

 一番は、準備期間があったことです。以前、経営側は「増資の予定はない」と言っていましたが、その時私は、「まるで自分の首を絞めるようなもの」だと不可思議の感に打たれました。ただ、だから今回急に「増資の必要性が出た」と言えたということです。しばらくすれば言えそうだという思いが元々あったのかもしれません。

 もう1つの理由は月岡社長に対する支持率です。去年の株主総会は約52%、今年は約61%。つまり創業家以外はほぼ全員再任に賛成したのですから、裁判所もこれを支えるに足ると考えたのではないでしょうか。