前回、「日本の輸出立国モデルは大きな曲がり角に来ている」と述べた。輸出でもっとも重要なのは、前回も述べたように自動車だ。以下では、自動車の輸出モデルがどのように変化しているかを見ることとしよう。

 【図表1】に示すのは、乗用車と自動車部品の輸出額および実質実効為替レート指数の推移である。

 乗用車輸出は震災後の落ち込みから回復して、2010年頃の水準を回復した。しかし、経済危機前のピーク(2007年秋)に比べると、半分以下の水準にとどまっている。

 経済危機前の乗用車輸出を増大させたのは、円安とアメリカの乗用車需要増だった。

 グラフに見るように、乗用車輸出と実質実効為替レートはきわめて強く相関している。07年秋頃までの乗用車の輸出は02年頃の2倍近くになっていたが、これは05年頃から著しい円安が進んだためであった。また、日本からアメリカへの資本輸出がアメリカの住宅価格を引き上げ、それがアメリカの乗用車需要を押し上げる効果を持った。円安と住宅価格バブルが互いに他を支えて、異常なほどの乗用車輸出増を実現したのである。

 しかし、このメカニズムは持続可能なものではなかったので、アメリカ金融危機によって同時に崩壊し、その後再現することはなかった。実質実効為替レートは、2007年夏以降ほぼ一貫して円高方向に動いている。

 震災による乗用車輸出の減少は一時的なものだったが、この側面の変化は構造的なものだ。しかも、現在の実質実効為替レートは、1995年や2000年初めと比べて格別円高とはいえない。経済危機までの数年間が異常に円安だったのである。したがって、円高は今後も継続するだろう。したがって、乗用車の輸出も回復することはないだろう。

 乗用車輸出は、2007年には日本の輸出総額の15.8%を占めていた。現在では10.6%に低下している。これが日本の貿易収支に与える影響は大きい。