前回、将来の労働力の需給を考え、労働力不足に陥る可能性が高いことを述べた。そこでは、将来の労働供給について、将来人口推計をもととした粗い試算を示した。これについては、さまざまの試算が試みられている。

 いずれの試算においても、労働力率の変化をどう見積もるかが結果を大きく左右する。労働年齢の男性の労働力率はすでに高くなっているので、女性と高齢者の労働力率がどの程度変化するかがポイントである。

 このいずれもが、制度に大きく影響される。

 女性については、育児支援と主婦の年金が重要である。高齢者については、在職老齢年金が重要だ。いずれも現在の制度は就労を妨げるバイアスを持っているので、これらが変われば、労働力率はかなり変わる可能性がある。

労働力供給は今後大きく減少する

 『平成23年版高齢社会白書』は、「労働市場への参加が進むケース」と「労働市場への参加が進まないケース」について、将来労働力を試算している。

 ここで、「労働市場への参加が進まないケース」とは、性・年齢別の労働力率が2006年の実績と同じ水準で推移すると仮定したケースであり、「労働市場への参加が進むケース」とは、各種の雇用施策を講ずることにより、若者、女性、高齢者等の労働市場への参加が実現すると仮定したケースである。

 ただし、「この推計においては、税・社会保障制度等の労働力需給に与える影響については必ずしも十分に考慮されていないが、こうした制度が変更されることによって労働力需給に大きな影響を及ぼす可能性があることに留意が必要」とされている。