2013年4月以降、複数回の金融緩和策(黒田バズーカ)の発動によって、一時期、わが国の経済状況はかなり改善を見せた時期もあった。しかし実態は、日銀にとって最重要課題であったデフレからの脱却は、未だに目途が立っていない。2%の物価上昇率という目標を達成できてはいない。

 一方、異次元緩和によって一時的に為替相場ではドル高・円安のトレンドが形成された。これは、わが国企業、特に自動車などの主力輸出企業にとっては絶好の“追い風”となり、企業業績は大きく改善した。それに伴い、景気回復の足取りはしっかりし、株価の上昇につながった。

 ところが、最も重要な構造改革では目立った進展は見られなかった。事実上、手つかずだ。構造改革のペースがほとんど上がらなかったことは、国内外の投資家にとって大きな期待外れだった。それは、アベノミクスがギリギリ及第点に留まる大きな理由である。

 多くの人は安倍政権に対して、規制緩和や労働市場の改革などを進めてくれると期待したはずだ。しかし、それは結果的に、“絵に描いた餅”に終わってしまった。それでは、政策運営について高い点を取ることは難しい。

 25日の会見で首相は、2020年度のプライマリーバランスの黒字化が困難になったと、財政再建の先送りに言及した。裁量的な財政政策が必要とはいえ、この状況が続くとわが国の財政リスクは高まりやすい。

 世界経済では、新しい技術や発想を取り入れた事業が生み出され、競争が激化している。新興国企業の台頭などにより企業間の競争は熾烈化するだろう。これまでの常識に基づいて、わが国をはじめとする先進国の企業が優位に競争を進めると考えるのは困難になっている。

 政治にも変革が必要だ。“リセット”ではなく、従来は踏み込むことのできなかった改革を進め、民間企業の投資意欲を刺激するだけの環境を整えられるか。それが次期政権の使命であるはずだ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)