1位の熱海市に見られる
産業の衰退と未婚率の関係

 では、なかでも特異な数値となっている街をいくつか検証していく。まずは1位となった熱海市(静岡県)である。

 熱海市は828市区のなかでトップとなっている数値がある。それが宿泊業、飲食サービス業の従事者割合で、25.0%。全国平均が5.5%なので5倍近い割合になる。

 熱海は言わずと知れた首都圏の奥座敷、古くから湯治の場として人が行き交った日本を代表する温泉地である。しかし、バブル崩壊以降、長年にわたる景気低迷、余暇の過ごし方の変化などに温泉関係のサービスが追いついていけず、ホテル・旅館の身売りや廃業が相次いだことは何度も報じられてきた。

 統計数字を追っていくと、91年に事業所数は4600、従業員数は3万362人だったが、2014年には事業所数が2974、従業者数が2万1537人と、ほぼ3分の2の規模にまで縮小。ピーク時には850施設あったホテル、旅館、保養所が300程度に激減している。職場となる施設が減少していることが原因と思われる若年層の近隣都市への流出も顕著である。

 熱海市が実施したアンケート調査では、子どもを持たない要因として「子育てや教育にお金がかかりすぎる」(72.6%)、「子どもを預ける施設が整っていない」(37.8%)との回答が多く、ここから「観光施設と住宅の混在」「商業施設の減少」「公園施設の改善」「数少ない小児科産婦人科」「旅館ホテルの廃業に伴う未利用土地」などが問題であると結論づけている(熱海市まち・ひと・しごと創生総合戦略 2016年1月)。30歳代の未婚率の背景も同じであろう。

 内閣府が毎年発表する「少子化社会対策白書」において、婚姻および出産と所得水準、雇用の安定は明らかに相関していることが報告されており、産業の衰退は決定的な要因となっている。こうした経済的な停滞はどこの市区でも起こりうる問題で、温泉業に特化した熱海市の現状はそれが顕著に表れた、警告的な事例と言えるのである。