「殺人犯」が生まれる家庭や環境…学ぶべき事件の背景とは

身の毛もよだつ凄惨な殺人事件。私たちはその事件のニュースを見るとき、殺人者の異常性や特異性に目が行きがちだ。そしてこう思う。「なぜ、そんな殺人鬼が生まれたのか」。『日本殺人巡礼』(亜紀書房)は、10年以上にわたり大事件の現場や周辺人物に取材し、彼らの生まれる背景を追った一冊だ。著者の八木澤高明氏に、取材から見えてきたものを聞いた。(取材・文/有井太郎、編集協力/プレスラボ)

殺人者と私たちの「境界線」とは
彼らは本当に異常なだけなのか…

 長い歴史の中で、命の尊厳を踏みにじる残虐な事件がいくつも起きてきた。直近でいえば、アメリカ・ラスベガスにおける銃乱射事件が挙げられるだろう。
  
 日本でも、そんな事件は相次いでいる。記憶に新しいところなら、障害者施設に侵入して19人を刺殺した昨年7月の「相模原障害者施設殺傷事件」、小学校保護者会の元会長が女児を殺害した今年3月の「千葉小3女児殺害事件」などがその代表だ。

 私たちは、これらの事件を起こした張本人を「異常者」として全否定する。「まともな人間ではない」と考える。それは間違っていないだろう。彼らが起こしたことは、紛れもなく「まともなことではない」のだから。

 ただ一方で、彼らがなぜ殺人に至ったのか、その過程を考えることも必要なのかもしれない。「異常者だから」と結論づけるのは簡単だが、しかし本当にそれだけで良いのだろうか。彼らの背景を調べると、殺人に至らしめた“何か”が見えてくるのではないか。
 
 そんな視点から凶悪殺人事件の現場を取材し続け、大事件の背景を追い続ける人がいる。ノンフィクション作家の八木澤高明氏である。

 同氏は、日本の事件史に刻まれる大事件の現場や、周辺の人たちを10年以上取材してきた。そして、その記録を著書『日本殺人巡礼(亜紀書房)』(亜紀書房)にまとめたという。