8月に設立したばかりのジェットスター・ジャパンは、早速、最低価格保証なる戦略を打ち出してきた

 まるで家電量販店の最安値競争のようである。

 来年末から国内での運航を予定している格安航空(LCC=ローコストキャリア)のジェットスター・ジャパンが「最低価格保証」なる戦略を打ち出してきた。

 同日同時刻の同ルートで、ジェットスターよりも安い他社の航空便を見つけてコールセンターに申告してきた利用者に対しては、その運賃より10%安く便を提供するというものだ。

 来年は、成田空港の発着枠増に伴いLCCの運航が増える。ジェットスターもその1社で、従来の航空運賃より4割安い運賃の提供を目指している。同時にLCC同士の激しい価格競争になることが予想されるが、いち早くこの最低価格保証を打ち出してきた。

 おもしろいのは、他社が展開する破格のキャンペーンにも例外なく対応する点だ。たとえば、スカイマークは10月30日から運航する成田~旭川、成田~新千歳線では席数限定で980円という価格を打ち出しているが、ジェットスター側はこうしたキャンペーンにも対応するという。つまり、便がバッティングすれば882円で提供するということだ。

 ジェットスターグループのブルース・ブキャナンCEO(最高経営責任者)は、この最低価格保証について「あいまいであってはならない。例外なく市場に出回っているすべての運賃を対象にすることで、われわれの“最低価格保証”というメッセージをはっきり届ける」と強気の姿勢だ。

 しかし、このジェットスターの目論見の前に立ちはだかるのが、現在の国内運賃規制である。

 現行の運賃制度では、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)、および、この大手2社の資本が20%以上入っている航空会社は、スカイマークやエア・ドゥなど1990年代後半に誕生した新興エアラインの運賃を下回ることができない。新興エアラインの保護育成を目的として設けられた規制だ。

 だが、国内線運航を目的として設立したLCCのジェットスター・ジャパンやエアアジア・ジャパンには、いずれもJALやANAの資本が入っており、現行規制のままでは、そもそも格安というビジネスモデル自体が成り立たないのだ。

 航空業界のグローバルスタンダードは自由競争であり、そうした土壌のなかで世界のLCCは誕生し力をつけてきた。にもかかわらず、皮肉にも日本では、新興エアラインに対する過保護なまでの規制が、逆に自由競争を阻害する結果となっているというわけだ。

 国土交通省は、国内でもLCCの運航が見込まれるこのタイミングで運賃規制を見直す方針。

 タイムリミットは、国内LCC便が飛ぶ来年春。具体的な詰めはこれからだが、ようやく真の意味での自由競争が日本の空にやって来る。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

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