Photo by Yoshihisa Wada
子どもの学習能力や性格は一人ひとり異なる。集団教育では、どうしても授業についていけなくなる子が出てきてしまう。
「生徒全員に満足感を与えたい」と松田正男が拓人を設立して、個別指導塾の経営に乗り出してから22年がたった。同社の最大の特徴は、生徒に“自分だけの世界でたった一つの教材”を提供しているところだろう。
松田が塾経営を始めたのは、1973年のこと。千葉県富津市の漁村に生まれ育ち、一時は東京で働いていたが、24歳のときに母親の面倒を見るため故郷に戻ることになった。生計を立てるためにまず思いついたのが学習塾だった。東京で英会話スクールの講師をしていた経験があったためだ。自宅で開業できて初期投資がかからないという身軽さが決め手となった。
最初は生徒20人を一堂に集めて指導する集団塾だった。事業は順調で、30歳代前半で教室は9にまで拡大した。
しかし、これでいいのかという思いに松田はとらわれ始める。「自分は教育者としてプロといえるのか」。理想の姿は生徒一人ひとりと対峙する個別指導ではないかとの思いが強くなり、今度は一転して家庭教師の派遣業に乗り出した。
だが、これも壁に突き当たった。家庭教師の教育現場は生徒の自宅だ。派遣した家庭教師からのレポートで報告は受けるが、自分で現場をチェックできないためサービスの改善につなげられない。紆余曲折を経て最終的にたどり着いたかたちがオフィスで指導する個別指導塾だった。
生徒の個性と学力測る
自社開発の2テストで最短勉強コースを提示
89年に株式会社・拓人を設立し、個別指導塾「スクールIE」の展開を始めた。41歳での再スタートだった。病院用の間仕切りカーテンでオフィスを区切り、個別教育できる体裁を整えた。
松田は「集団塾を経営していたからこそ、集団塾のメリットもデメリットも知っている。集団塾ではできないサービスを提供しなければ個別指導塾をやる意味がない」と言う。10年以上に及ぶ集団塾経営の経験が強みにつながった。
松田は、「1人の子どもを教育するうえで知るべきことは三つ」と言い切る。(1)性格や能力的な持ち味、(2)子どもの現状の学力、(3)将来どうなりたいのか──だ。
この三つを知るためにETS(Environment Test System=やる気度診断テスト)と、PCS(Personal Curriculum System=成績アップシステム)という二つのテストを開発した。