日頃コンビニで何気なく手にする菓子の内容量が、昔と比べてわずかながら減っている。こんなことに気づいた人はいるだろうか。
たとえば江崎グリコの代表的な人気商品「ポッキー」は、昨年10月以降、従来の一箱当たり80グラムから72グラムへと内容量が減らされている。これを本数に直すと、ポッキーが2本ほど減ったことになる。
これはポッキーばかりではない。よくよく確かめれば、カプリコシリーズの一部など、他の商品も微妙に内容量が減っているのだ。
この減量の理由は、「原材料高による製造コストの増加にこれ以上耐えられなくなった」(江崎グリコ)ためだ。ポッキーを例にとれば、昨年後半から、主原料となる小麦、粉乳、食物油脂、カカオ豆などが軒並み高騰しており、その勢いは留まることを知らない。そのため同社は、主要製品の減量による「実質値上げ」を行ない、コストカット効果を目指しているというわけだ。
現在、菓子業界は岐路に立たされている。
これまで業界では、増量や安売りによる熾烈な「薄利多売競争」が行なわれてきた。森永製菓や明治製菓が得意とする高級チョコレートはその最たる例だろう。「そもそも、あれだけコストがかかる高級チョコレートを100円程度で売っていたことに無理があった」と大手メーカーの関係者は語る。昨今の原料価格上昇は、競争ですっかり疲弊した菓子業界にさらに打撃を与えているのだ。
とはいえ、菓子の値上げは容易ではない。そもそも若年層が主力購買層の菓子は単価が低く、「10円値上げしただけでもお客は大きな抵抗を感じてしまう」(関係者)からだ。安易に価格を「棒上げ」することは命取りとなる。そのため各社は、これまで価格を据え置いて内容量を減らす代わりに、商品に付加価値を付けてお客にアピールする作戦を取ってきた。
たとえばグリコは、全製品のパッケージをリニューアルして色や文字を見やすくしたり、袋も開けやすくするなど、工夫に余念がない。
流通過程で弱い交渉力
圧迫要因はインセンティブ
しかし、メーカーが値上げに難航してきた大きな理由は、他にもある。「他業界のメーカーと比べて流通過程における発言力が弱い」(食品業界に詳しいアナリスト)のだ。