たこ焼きチェーン「道頓堀くくる」を運営する白ハト食品工業は昨年12月、10個500円を8個460円に改定した。同社では「値上げはしていない」と強弁するが、個数当たりの事実上の値上げであるのは間違いない。
すでにたこ焼きチェーン「銀だこ」を運営するホットランドでも、昨年3月末、10個500円から8個480円に値上げ。さらに今年3月には8個500円への値上げを余儀なくされた。1個当たりで見れば50円から62.5円と、実に25%もの値上げである
現在、大手たこ焼きチェーンが、続々と「値上げ」を行なっているのをご存知だろうか。彼らが置かれた現状を見ると、それは致仕方ないと言える。なにしろ、タコ、ミックス粉、カツオ節、ネギ、天かす、ソース、マヨネーズ、油、さらにプラスチックパック、経木(木製の器)の値段までもが上昇しているからだ。
なかでも影響が大きいのは、タコ価格の高騰だ。海外での日本食ブーム、各国の禁漁政策による供給不足、原油高などにより、「前年比で10%も価格が上昇した」(ホットランド)という。タコを最も消費するのは日本、イタリア、スペイン。だが、ユーロ高の影響で、日本が買い負けるケースが増えている。
ホットランドの場合、原材料コストは販売価格の40%。その半分に当たる20%をタコが占めている。同社が年間に仕入れるタコはじつに2500~3000トン。それだけに影響は甚大だ。
こうしたなか、ホットランドでは、「タコとたこ焼きを従来よりも大粒化し、油もコレステロールフリーにして味を向上するなど、(顧客に値上げを受け入れてもらうための)努力を最大限払っている」(佐瀬守男社長)。
それでも続くタコの価格高騰と供給不足に対処するため、同社では昨年8月以降、西アフリカでタコ漁を行なう15隻の船とのあいだで漁獲を丸ごと購入する契約を結んだ。
漁獲のタコは大小さまざまだが、そのなかでたこ焼きに使えるのは小さなタコに限られる。そこで、同社はタコ専門の商社も設立。大きなタコは寿司ネタや刺し身用として他社に販売し始めた。
今後、たこ焼き店の値上げがさらに相次ぐ可能性は高い。このまま原材料の値上げが続くようならば、いずれたこ焼きが庶民の味ではなくなる日がくるのかもしれない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 松本裕樹)