昨年11月23日、横浜、大阪、神戸で、それぞれ35~60台のトラックが、「高速料金値上げ断固反対」などの垂れ幕や旗を付けて抗議パレードを行ない、街行く人びとの注目を集めた。

 首都高速、阪神高速道路が今秋導入を目指す距離別料金制度だが、長距離利用が多い運送業界にとっては料金が「実質値上げ」となるため、トラック運送業界は強く反対しているのだ。

 それもそのはず。同業界は幾重もの逆風にさらされている。その1つが過当競争による運賃の低下である。

 トラック運送業界は、1990年の規制緩和により、新規参入が免許制から認可制に、運賃も認可制から届け出制になった。それ以降、約4万社だったトラック運送業者数は2005年度で約6万2000社と、1・5倍以上に増加した。運送業はサービスに差がつけづらいこともあり、価格競争は激化。全日本トラック協会によれば、中小企業の営業利益率は平均でわずか0.9%に過ぎないという。

 そこへきて、燃料である軽油価格のこの高騰ぶりである。

 03年度には1リットル当たり64円だった軽油価格(ローリー価格)が、今年5月(予想値)には115円に高騰。業界全体で消費する軽油量は約160億リットルなので、1リットル当たり51円上がれば、年換算でじつに約8200億円の負担増となってしまう。現状では、燃料コストの上昇分を賄える体力のある企業はほとんどない。

 「走れば走るほど赤字だが、ここで仕事を断ってしまうと次から仕事がもらえなくなる」(関係者)と悲痛な叫びも聞こえてくる。

 だが、トラック運送業者の大半は中小零細業者であり、1~3社の「特定荷主」に依存しているケースがほとんど。軽油価格高騰分を運送料に転嫁するのは困難だ。

 実際、全日本トラック協会が行なった調査によれば、今年6月時点で軽油価格高騰分を一部でも荷主に転嫁できている企業は約4割。6割が高騰分をすべて自己負担している。

 「燃費のよい運転や、高速道路をなるべく使わないなどで対応せざるをえないが、そんな努力で克服できるレベルをすでに超えている」と、業界関係者はもはや諦め顔なのである。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 松本裕樹)