1日限定150本の「幻の羊羹」

 その行列の先にある店こそが、「小(お)ざさ」である。

 驚くべきことに、「幻の羊羹」を求める行列は、40年以上、途絶えたことがないという。
 1日限定150本の「幻の羊羹」を求めて、毎朝、全国からファンが集まる。
 1坪で年商3億円以上。提供する商品は、羊羹と最中の2品のみ――

 考えてみてほしい。
 吉祥寺の「小ざさ」は、「広告」を打つ必要はあるだろうか。
「営業」や「PR」をしなければならないだろうか。
 そのいずれも必要がないだろう。
 なぜなら、40年以上、「行列」が途絶えないということは、40年以上、「需要過多」の状態、つまり、提供する商品数よりも、ほしいと思われる商品数のほうが常に多い状態を保っているからだ。
 それでは、小ざさの強さの秘密とは、いったい、何なのだろうか。

 実は、小ざさの強さの秘密は、圧倒的な「コンテンツ力」にある。
 勘のいい方なら、「幻の羊羹」の売上は全体の1割程度にすぎず、9割ほどを「最中」で稼ぎ出していることに気づくだろう。
 一見、圧倒的な「ブランド力」を持った「幻の羊羹」で注目を集めて、最中で稼ぐ、ビジネスモデルの勝利に見える。