紫の一瞬の輝きの声
七海を泣かせた「コンテンツ」の力。
これこそが、小ざさの強さの秘密である。
吉祥寺「小ざさ」の代表・稲垣篤子氏が書いた『1坪の奇跡』には、いかにして、「幻の羊羹」を創り上げ、今なお、作っているかが描かれている。
或る時から、風が見えはじめた。
或る時から、澄んだ炭の、炎の力強さをつかんだ。
或る時から、小豆の、紫の一瞬の輝きの声が聞こえてきた。
(『1坪の奇跡』本文より)
羊羹を作っている際に、ヘラを銅鍋の中で動かすとき、「半紙一枚分の厚さを残す」という。
もはや、商品作りは、ここまで行くとアートである。
そこまで「コンテンツ」を昇華したとき、単なる羊羹は、「幻の羊羹」と呼ばれるようになり、やがて、「ブランド」となる。
その「ブランド」の元に、人は「行列」を成す。
そして、「広告」「営業」「PR」の一切いらない、マーケティング不要の状態となる。
そう、あるいは、マーケティングが不要の状態となるこそが、マーケティングの理想なのかもしれない。